男女平等地獄絵図
「ようこそ地獄へー。審判の後懲罰も決定するから覚悟しなー。まぁ極楽行きはほぼないと思いな。」
鬼はそのグラマラスな見た目に似合わず、随分とやる気のない話かただ。
短く切り揃えた金髪に近い髪の毛がよりいっそうその美白を際立たせている。
…今気が付いたけれど、さっきから美白続きだ。
その鬼さんは長い睫毛を邪魔そうにぱしぱしさせた。
(てかこの人(鬼)、せっかくすんごいプロポーションなのに…)
「…ジャージかよ。」
あ…
あぁまた心の声が…。
「…あぁ?」
鬼は片眉毛をくいっと上げた。
さっきの人より大分怖い。
「あのーうそのーう」
合言葉、『これは夢!』で、なんとか乗り切ろうとする私。
…まじこぇぇ…
「あのさー、はるばる下界から来てもらって悪いけどぉー、あんなさぁ格式ばった格好行事中ぐらいだからぁ。だいたいここにくる男なんて馬鹿な下界の人間だけだよ?…わざわざ普段の職務中に洒落こむ方がおかしいってぇ。」
鬼はつらつらと話し続ける。
私の脳内は「?」でいっぱいだ。
「…あのー…」
そうっと手を挙げる。
「何ー?まだなんかあんの?」
あるともあるとも…
「しっ職場?にですね…男いないんですか?」
緊張と恐怖のあまり極めて優先順位の低い質問をしてしまった。
あぁ…
鬼はまたもめんどくさそうに答える。
吐息すら色っぽい…。
「男いないしぃ。」
「…へ?」
「だからぁ、地獄には男の鬼がいないのぉ」
へっへぇ…。
それはしらなんだ。
「それまたなんで?」
鬼はぴしっと指を立てる。金色の指輪が光っていた。
「昔はいたんだけどね。男たらしな女が鬼を誘惑して懲罰期間誤魔化してすぐ上行かせちゃうって事件が一時期続発してさぁ。じゃあ女たらしな男はどうなの?っつう話なんだけどまぁその時は男だったんだよ。…で、極楽の取り締まりは男、地獄は女って決まっちゃったの。…まぁ鬼の寿命なんてないようなもんだから男いなくてもぶっちゃけ困んないっつうか。極楽はいい男揃いなんだけどねー。…だからほら、閻魔様もものすごい美人なのにものすごいダサイし。あれで地獄の主神、冥界の総司だから笑えるよね。って、まだ知らないか。」
…ふむふむと話を聞いていた私は最後のセリフに思わず固まった。
(『美人』で、『ダサイ』…?)