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男女平等地獄絵図

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私はとろけるような感覚に包まれていた。
ヤマから何かが流れ込んでくる。
ヤマはいつもよりもさらに美しかった。
あぁ、これが「本当の」ヤマなのだ。
ぼんやりとした頭で考える。
背も少し伸びている。
胸は勿論ない。
固く、強い胸だ。

…ヤマはやっと唇をはなした。
ガッカリした。
何でガッカリするんだとかいう自問をする気も起きないほど疲れきっていた。

「…」

ヤマはじっと私を見つめる。
縄はいつのまにかほどかれていた。

「やっぱり正解じゃないか」

私はアホみたいに笑いかける。
ヤマは神様の様だった。
いや、多分神様なのだ。
私にとっては神様なのだ。
ヤマは私を見る。
私もヤマを見る。
…なんて綺麗な顔。



「お望み通り」


…突然だった。
何処かから声が響き渡った。
美しく響く、有り得ないほど優しくそして恐ろしい声が。
…まるでヤマみたいな。
でも何処かで一度聞いたことあるような…?

私は声の主を探す。
ヤマはきゅっと口を結んだ。


カツン…

と、誰かが地面に降り立った。
そこにいたのは軽く日焼けをした、美しい青年だった。
…ヤマくらい、美しい。
私はぽかんと見上げることしかできない。

「…見てやった。契約違反だ。ヤマ。」

ヤマが冷めた口調で言葉を返す。

「…もうバレていた。というかかなり最初から疑われていた。」


「ちょっ…ちょっと待てよ?!話が読めないんだけど…」

青年とヤマは顔を合わせる。
ヤマは少し困った顔で言った。


「椿、変に思わないか?」

「え?」

「…公正に裁くはずの、というか絶対的なルールとして『公正に裁かなければいけない』この地獄という空間で、裁く側が『女』しか存在しないというのは?」

「…」


なんとなく、話が読めてきた。

「…だから、なのか?」


ヤマは話を続ける。

「地獄の秩序が乱れた時、極楽と地獄で男女を別つことを求める声は鬼たちの間で日々大きくなっていった。とんだ悪人に来られてしまった極楽でも同様だ。簡単に無視できないほどにまで男と女、互いの疑心暗鬼は膨れていった。…だから分けた。天界同士の争いの行く末などわかりすぎるほどわかっている。破滅だ。」

「…」

「しかしそれは同時に一歩間違えればさらなる不平等を生み出しかねない状態をも生み出した。…だからトップにそのまま我々を置いた。我々はその問題が浮彫りになるまで一切姿形を見せたことがなかった。それは下につく者にとっての畏敬の念と…『不信』の念を生んでいた。それを逆手にとった。」


「…ちょっと、まてよ」

「なんだ椿?」

「もしかしてこの人は…」

私は青年を見つめる。
圧倒的なパワー、そして胡散臭さ。

青年は整った唇を静かに開く。

「二代目閻魔大王殿にはお初にお目にかかりますね。阿弥陀仏と申します。以降お見知りおきを。」



…冷たく厳格な話かた。
阿弥陀様の脳内イメージがガラガラと崩れていく。

「あ、の…あなたは…」

「女です。一応は。」

阿弥陀様はしれっと答える。
色々と事態におっつかない。

…えーとつまりは…




「あ」


「ん?」


「今、『閻魔大王』って呼んで下さいましたよね…?!」

ヤマが目を見開く。
そして阿弥陀を見る。
阿弥陀はしれっと答える。


「言ったが?」




「っありがとうございます!!!!!!!!!」

ヤマはまず、あんぐりと口を開けた。
そして、笑った。

「つっ椿お前こんな色々秘密を暴露したというのになんて抜け目のないやつなんだ!!さすがだな!」

ヤマは頭に手をあてて笑いころげる。
阿弥陀様は、やれやれと頭を振っていた。




作品名:男女平等地獄絵図 作家名:川口暁