男女平等地獄絵図
「んっ…」
足でけっとばそうにも床に押し付けられているから上手くいかない。
猫男は私の縛られた手と顎を掴み抑えつけている。
「…っヤっ…」
「ヤマは来ないよ。爆破騒動で今頃てんてこまいしてるさ。」
「んんっ…」
気持悪い。
…何だか力も抜けてきた。
頭がぼんやりとする。
猫男が私の手首を抑えつけるのを止めた。
けれども私の手は動こうとしなかった。
「…」
猫男はYシャツのボタンまではずしにかかる。
へんたいめ。
足触んな。
ムカつく。
ムカつく。
馬鹿にしている。
私を、そして私を選んだヤマを。
「うぐっ」
私は猫男の舌を噛みちぎり頭突きをした。
猫男は口を血だらけにしてのたうった。
「…っ…」
息を整える。
涙はまだでてない。大丈夫。
私は息を深くすった。
自分でもびっくりするほど冷たい怒りが体中を取り巻いていた。
「お前に判決を下す。」
猫男の足下にぽっかりと真っ暗な穴が空いた。
猫男は叫び声をあげながら吸い込まれていった。
私はまだ息が荒かった。
こんなこと出来るようになってしまった。
「…」
猫男の血の味がする。
死人の味だ。
きっと私の血もそんな味がするんだろう。
だって私は死んでしまった。
死んでしまったんだもの。
「…ふっ…やっやまぁ…」
わんわんと私は泣いた。
初めて自分の死のために泣いた。
奏とか沢谷とか関係なく、わんわんと。