男女平等地獄絵図
「…か…」
あの頃のままだいやちょっと大きくなったかなあれ代替わりの儀の時見た姿はもっと大きかった気がするんだけどあぁでもでもでも
「椿?」
賢そうで意地悪そうでなのにうんと優しい笑顔
…あぁ。
「か…」
奏がいる。
「奏っ…」
ぼろぼろと涙が溢れでる。
どうして、だとか今はまだ考えたくない。
ただ彼に包まれていたかった。
「…椿、会いたかった?」
奏はいたずらっこみたいににやっとする。
「…ばっかやろ。当たり前だろっ…。」
私は奏の胸をぼかすか殴った。
奏は馬鹿力めとデコピンをしてくる。
そのデコピンすらうれしくてたまらないからどうしようもない。
…もしかして阿弥陀様が認めてくれたんだろうか?
さっきの捨て身のお色気作戦で。
あんなでよかったのかな?
(…ん?)
…ちょっと待てよ。
可能性はまだあった。
一番最悪なパターンが。
「…奏」
そうだ。
むしろこっちのが有り得る話だ。
「なに?」
「お前、まさか…」
まさか
「ありゃ、もうバレた?」
奏が笑った。
その笑い方を見て第3の最も当たり前だった可能性にやっと気付いた。
その瞬間、スウッと何かが私に擦った。
とっさに身をかわしたが着物ははらりと切れていた。
奏はいなかった。
いたのは奏の姿をした「何か」だったのだ。
「わぁ、色っぽいね、椿ちゃん。ふふっ君には『奏君』の姿のままのがやりにくいでしょ?それにしてもちょっと侮ってたよ。まさかこんな早く気付くとは思わなかった。君バカそうだし。」
男は奏の顔で高笑いし、ナイフをひゅんひゅんと回転させる。
いや、もちろんバカだから気付かなかった。
男が勝手にバレたと勘違いしただけだ。
こんな風に考えられるほど自分が冷静でいるのに少し驚いた。
たぶん、その理由は第3の可能性が現れたおかげで2番目の可能性が消えたことにあると思う。
(奏、ごめん。あんたはもっとハンサムだったね。)
私は切れた着物(ってか下着もどき)を無理矢理手で押さえ男をにらんだ。
「何?椿」
男はわざと「ちゃん」を付けずに呼び、笑う。
それを見た私はどうやらプチ切れしたようだった。
「…お前」
「ん?」
「元体育会系ナメんなよ。」
私は片手で着物を押さえたまま、ヤツに跳び蹴りした。