男女平等地獄絵図
「さぁて二人とも元に戻ったし。これからどうすればいいんだ?」
私は仁王立ちで二人に聞く。
二人ともなんだかすっかり疲れきっていた。
「とりあえずこの部屋の魔の手を逃れられたら後はそんなに心配することはありません。私がお二方を上まで連れて行くのでその後ヤマ様たちと合流すればよいかと。」
羅刹天がさらっと答えた。
私を見ないまま。
でも今や私も怒っていない。
羅刹天が照れてるんだってことがわかったからだ。
なぜかとゆうとこの場に私のややこしい着物を着させることの出来る人間が誰もいなかったからである。おかげで私は未だ下着もどきのような格好だった。
「ふーん、じゃあ遠慮なく…」
私と水翁は羅刹天の手を握った。
ひゅんひゅんと数秒控えの間の残像が見えたかと思ったらもう極楽(最初に見た白い空間)についていた。
「あっさり着いたな!さすが羅刹天」
私はパッと手を放しヤマを探そうと急ぐ。
何でだか無償に会いたくてたまらなかった。
「…なんか…」
後ろで水翁が呟いている。
私は構わずうろうろとしていた。
どうやっていけばいいんだ?
そういやヤマは馴れれば本能的に行けるようになるとかなんとか言ってたけど本能も何もついさっき?閻魔になったばかりなのにそんなもの持ってないと思う。
「羅刹天様…なんか変ですよ…ここ」
「…あぁ、わかってる。」
「…やっぱり…おかしいですよね?二重に罠までしかけておいてこんなあっさり…」
「それに妙に静かすぎる。…ん?…!椿様?!どこにっ」
「わっいつのまにか消えてますよ?!」
羅刹天と水翁が遠くで何やら叫んでいる。
何やってんだか。
…ていうか。
私は今どこを歩いてるんだろう。
本当にいつのまにやらここまで来ていた。
これが本能ってやつだろうか。
(…さむっ…)
変な極楽だ。
極楽のくせに妙に暗い。
まるで地獄の空模様みたいだ。
「…?」
小さな音が聞こえた。
なんだろう。
なんだか変だぞ。
これも本能か?
カツン…
「誰だっ…」
大きくて優しい掌が後ろからのびてきた。
そしてそれはそのまま私をつつみこむ。
「なっ…」
「温かいね。」
私は口をつぐんだ。
なんだ今の声。
「椿」
私は後ろを向く。
期待はしていない。
していないけど。
でも、だってこれじゃまるで…
「椿」
奏そっくりじゃないか。
「…久しぶり、椿。」