男女平等地獄絵図
「…さて。冗談はここまでにして本題に入ろうではないかっ」
「冗談だったのか…」
「まぁまぁ気にするな。つまりはな、会いたいのだろう?人間になりたいのだろう?…生き返りたいのだろう?」
「えっ…」
ヤマは目をぱちくりさせる。
そんな具体的なこと考えてなかった。
そういえば私はどうしたいんだろう?
自分で自分に問いかけるもそう簡単に答えはでない。
(…でも…)
「生き返りたい…はちょっと違う気がする。」
私は考え考え呟いた。
ヤマはほうっと眉毛を上げた。
「生き返りたくない?…それは想定外だったな。」
「いや…、生き返りたくないってわけでもないんだ…でも、なんか違う気がする。そういうのはフェアじゃないと思う。…うん。」
私の台詞を聞いたヤマはにやっとした。
ヤマがにやりとするタイミングがよくわからない。
「椿は体育会系だな。」
そして私の頭をわしわしと撫でる。
こいつ本当は男じゃないんだろうか。
撫でるのはいいがもうちょっと気を使って欲しい。
私の頭は余計もみくちゃにされた。
鳥の巣みたいになってしまう。
…と言ったら「胸見る?」と言われた。
ない私への当て付けだろうか。
「いや、遠慮しとく。なんだその残念そうな顔は!」
「椿が失礼なこと言うからではないか。全くここをどこだと思ってる。地獄だぞ。おっそろしー女の園だぞ。…あっくれぐれも人間には色目を使うのではないぞ。いくら椿が元人間だからと言ってだな、閻魔の魔力に惹かれたら極楽に逝ける者も逝けなくなってしまうからな。」
…んん?
「ん?ん?ちょっと待て!…色目?」
どういうことだ?
ヤマはいぶかしげな顔の私を見てやっと気付いた様だった。
またしても自分が何も説明していなかったことに。
「んん?あー…あれだ。閻魔は魔力が強すぎる。そんじゃそこらの人間じゃ、手におえないというわけだな。うむ。」
「ふーん?よくわかんないな。」
私は頭をぽりぽりかきながらついでにボサボサにされた髪の毛を直した。
魔力なんて全く溢れてない気がする。少なくとも私からは。
「…っていうか…なんか忘れてないか?ヤマ」
「ううん?ラジオ体操か?そういえば今日はまだやってないな。」
ヤマは不思議そうな表情で天井を仰ぐ。
私はイライラとヤマに掴みかかった。
冗談でも止めてくれ。
「奏のことだよ!」
ヤマは私に揺すられガクガクと揺れながら叫んだ。
「うおううおう何をする椿。…だからーあれだ、うん。閻魔になるのだ。」
…
「あぁ?!」
私はますます強くヤマを揺さぶる。
いい加減にしてくれ!
意味がわからないにも程がある!!
「わぁーっだからだからあれだ!代替わりの儀は完成しなかっただろう?だから、まだ一応椿は不完全な閻魔なのだ。」
「なっ…今更遅いだろ!じゃあどうすればいいんだ!」
「承認を得るのだ!ストップ!」
ヤマががしっと私の腕を掴んだ。
私は泣きそうな顔でヤマを睨む。
「まぁそう興奮するな。大丈夫だ。…まぁ極楽・地獄双方全ての承認を得るのは不可能としてもな、様はトップ…上層部を狙えばいいのだ。一番てっとり早いのは…」
「…早いのは?」
ヤマは心底嫌そうな顔で言った。
ヤマに苦手な相手がいるのかと少し驚く。
「…阿弥陀。」