男女平等地獄絵図
…やばいぞ…涙が止まらない…
何をしてるんだ私は。
私はごしごしと涙を掌でこすった。やってしまった。ついに認めちまった。
怖い。…怖くて、でもどこか嬉しい。
だってそれは、大切なものだったから。
「そうか!」
「え」
ヤマが急に叫んだ。私は拍子抜けしてぽかんとヤマを見上げた。
「え…あ、うん。」
「うん!そうかそうか!」
ヤマはなにやら満足げにうんうんと腕を組みつつうな付いた。
さっきまであんなキリリと真面目な顔をしていたのに、もうあっというまに元に戻っている。
「…え?あのー…どうしたんだ?」
「ハハハ!いや、嬉しくてね!やっと椿が認めたからな。本気の恋を認めた女は美しくなる。閻魔とは美しくなければならん。つまりはな、椿はやっと閻魔に片足突っ込んだ様なものなのだ!ハハハ!」
「あ…そう…」
ヤマって…
ヤマって…
(なんか色々馬鹿らしくなってきたぞ…)
私は久々に呑気な種類の溜め息をついた。
けれどもヤマは一行に気にせず意味不明な行動をしだすありさまだ。
「うっふっふっ」
「あにすんだよ」
ヤマはあろうことか私の鼻を人さし指でブタ鼻にしてきた。
全く本当にわけがわからんやつだ。
わけわからんが、でも自分の姿が想像するだけであまりに間抜けでつい笑ってしまった。
どこの世界に閻魔がブタ鼻されてるの想像する人間がいるだろう。
そうすると、ヤマはまた満足そうに笑うのだ。
「そうだ。椿は笑っていろ。それか怒っていろ。私は昔から涙に弱くてな。困るんだよ。」
「…」
お…
お…
(男前…!!)
私は恥ずかしくてうつ向いた。もちろんブタ鼻がだ。
まぁ…それだけじゃないけども。
なんだかなぁ。
本当に、何でもやれちゃいそうだよな。
ヤマがいれば。
何の根拠もなしに。
「…ははっ」
「む、なんだ椿?」
「いや、なんでもない。」
不安は、今のとこ。