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男女平等地獄絵図

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「ごぉらぁぁ!!!!!!!!!!!!!!」

「うわっ」

ななななななんだぁ?!


向こうから誰かがずんずんやって来る。
シルエット的にかなりの長身。


「三途の川ではしゃぐたぁ何事だ?!…ったく私がさぼらなかったらどうなってたことか。まぁどうにもならんがな。」


…うっわぁ…


(もんのすごい美人!!)


いきなり現れたその人は、いろんな意味で仰天な女だった。
長くつやつやとした黒髪をポニーテルでまとめている。
目は切長で凌としてて、ホリが深くてハーフのように整った顔立ちだ。

でも…


「ださっ」


…げ


おっ思わず声に…。


「…うん?」

「ひぃっ」

キレてる!!



…そう、彼女はなんとも奇妙な趣味?をしていた。

紫のぴちぴちしたティーシャツにはメロンパンが描かれている。
しかしそのメロンパンには妙にニヒルな顔がついているのだ。
そしてさらにそのシャツを無理矢理ハート模様のテラテラしたパンツにインして、裸足で立っているといういでだちだった。


(こいつ頭おかしいんじゃ…?)

さすが夢!!


…と、感心?しているのはいいとして。

さっきから気になるのがこの距離である。
妙に顔が近いような…?


「おい娘。」

怪しげな美女はにやりと笑った。
こりゃあ相当怒ってんな…。

(いや、そいえばこれは夢だった。)

夢ってなんだか夢だってことをすぐ忘れてしまう気がする。

まぁしょうがないか。


女はなおも囁く。

うっとりとするハスキーボイスだ。


(近くで見るとますます美人だなこいつ…。)




ちゅっ






…あ?


あぁ?!


「なってんめぇっ…なにすっ…レレレレズビアンかさては?!」

夢って自己願望のあらわれってどこかで読んだ気がする。
じゃあ私は秘かに美人なお姉さんとキスしたいと思っていたのか?!

パニックのあまり変なことしか考えられない。

女はけろりとした顔で私の顔をじろじろと見ていた。

「べべべ別にそういうのは個人の意思だから自由だけど!!普通に考えてなんの承諾もなしにそういうことしていいと…」

さら…。

と、私の前髪をかきあげて彼女はでこに触れた。

ひぃっ!!

「お、でてきた…。」

「?!…なにが…」

「あっち」


女はびしっと川の向こうを指差す。
白い綺麗な指だ。


「あっちに行けば地獄につく。。地獄についたらマコっていう怖い鬼がいるから何か言われたらおでこ見せな。でもヤマが無理矢理とか言うなよ。あくまで自分の意思ってことで。」


「…。」






あぁ!そういう設定。

…それにしても面白い夢だなぁ。
起きたら秦にも聞かせてやろう。


秦とは私の弟のことだ。

秦は中学3年生で、まだ中坊のくせに妙に落ち着いてて怖い。
でも実は世話焼きのかなりいいやつだ。
だからこの変な夢もきっと呆れた顔で、でもちゃんと聞いてくれるはずだ。


「てか『ヤマ』…?山がどうかしたのか?山登ればいいの?」


ブーーーっと女が吹きだした。

めっちゃ失礼さっきから!!!!!!


「っ…くくっさてはお前馬鹿だな?まだ夢だと思ってる上に山。…山!!」


あははははと女は笑いころげる。

(なにがそんなにおかしいんだ。…それに思ってるもなにも夢だし。)


なんだか無償に腹が立つけど、夢なんだからしょうがない。
それにその「地獄」ってのにも興味がある。

私のイメージだとゴリマッチョな鬼達が金ぼう振り回して悪人たちをおい回してる感じだ。


なかなか私も創造性豊かだな。こんな変な夢見るなんて。



私は軽く下がって女を見上げた。
白い肌が眩しい。

「…じゃあせっかくだから行ってみるよ。あんたもサボリ?とか言ってたけどサボるのも適度な量にしろよ?。…あとむやみやたらに人にキスすんなよ?」


女はまたにやりと笑う。

そして静かに呟いた。

「健闘を祈る、…柳椿。」

作品名:男女平等地獄絵図 作家名:川口暁