男女平等地獄絵図
「それでは失礼つかまつるっ」
ヤマは再びひゅるんっと消えた。
ダサい服の残像が残る。
私はぽけらっとつっ立っていた。
(おいおい嘘だろ…。私が一体なにしたってんだ。てゆーかなにすりゃいいんだ?!)
ちらりと羅刹天を見やるも彼は明らかに不満そうな顔をしていた。
そんなヤンキーみたいな眉毛で怖い顔しないでほしい…。
「…椿…様。」
羅刹天がギロリと私をにらん…見上げた。
思わずとびあがる。
ひぃっ
「それではまず不本意ながら…大っ変不本意ながら…化粧部屋へ連れて行きましょう。ちなみに今回限りですから。閻魔たるもの冥界を把握しないでは何もできませんから。…次回からは自力で。」
…ひーどーいー…。
なんっか腹立つなこいつ。
ヤマに対する態度と違いすぎるぞ。
…私は無償に羅刹天を困らせたくなった。
あぁ、この感覚は懐かしい。
生前、スケットに入った部活の生意気な後輩に悪戯を仕掛けた時とよく似てる。
「柳先輩とかぜってぇ恋人できなさそう。見た目男で中身までこの口調じゃ…。」
などと言ってきた男がいたっけか…。事実恋人できる前に死んだけどね!!
…とにかくやつの目はそっくりだ。
あの時の後輩に。
(…ってもなぁ。私今もう変身「後」だぞ?高校デビューしちゃったし。)
あの作戦は使えない…。
と、なるとどうすれば…。
ふっともいちど羅刹天に視線を戻すと既にすくっと立っていた。
…でかい。
…でもヤマと同じくらい。
羅刹天は決まり悪そうに手をさしのべてきた。
とりあえずは何も思い付かないし、まぁ実際助かるから諦めよう。
…私はぴょんと抱きついた。
「…っんなっ?!」
羅刹天は思いがけなく尻餅をついた。
おかげで私も共倒れだ。
「ちょっ…痛いぞ!」
羅刹天はクールな顔などもはや崩壊し真っ赤になってあたふたしている。
「つっ…椿様がいきなり抱きついたりするから…手だけ握ればいいんですっ」
「…え。でもヤマは…」
「あの方は女ではないですかっ!そもそも元閻魔大王というお立場だから許されたもの…本来ならば私めは大王にお手を触れることも出来ない立場なんですよっ。」
私は少しびっくりした。
こいつは私を女の子扱いしてるらしい。
…おまけに一応閻魔と認めてるらしい。
「…ヤマと飲みに行ったんじゃないの?」
「だっかっらっあの方がちょっと自由すぎなんですよ!」
羅刹天は大きな溜め息をつき、再び私に手を差し出した。
私は少し緊張しつつも、ぎゅっと握り返した。