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∑-シグマ-

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「ここには貴方みたいな“兵器として改造された人達”が同様に実験体として扱われているわ。同じ研究をしていながらもその事実に目を瞑ってしまった私も同罪なのかもしれないのだけれど。」
女性が愁いを帯びた溜め息を吐くと、シグマが口を開く。
「そうだったのか……、でアンタはどうするんだ?」
その言葉に女性が口を開く。
「この施設を無力化し、ここの所長であるプリズムを亡き者する、それが私の罪に対する償いなのよ。例え私が力尽きようとね。」
女性がショットガン片手にドアノブに触れようとしたとき、シグマが呼び止める。
「……待てよ。」
女性がその言葉に振り返る。
「そう言う事なら、俺も手伝う、さっきのでアンタには借りが出来た。足手まといになるかも知れねぇが、俺も連れて行ってくれねぇか。」
その言葉に女性が鼻で笑うと、腰に付けられていたマガジン式拳銃や白衣の下に装着していたサブポーチ、マガジンをシグマに手渡す。
「……いいけど、命の保証はしないから。」
「フッ……、話を聞いた以上それは覚悟の上だ。」
シグマがサブポーチを腰に取り付けると、女性の名前を聞く。
「そう言えばアンタ、名前は?」
女性はそれに対し、自嘲気味に答える。
「……クレゾールよ、今となっては単なる人殺しだけどね。」
「と言う事は今から俺も人殺しの仲間入りだな。」
シグマがそう言うとクレゾールはドアの鍵を開け、ドアノブをそっと回し、呟く。
「さぁ、行くわよ!」

部屋を出るとそこには大量の研究員、それも閃光弾を警戒してかゴーグルを装備した状態で。シグマは研究員の一人に銃口を向ける。
「!!」
研究員達が銃口を一斉にシグマに向ける。それを見たクレゾールが焼夷弾のピンを引き抜き、地面に投げる。
研究員がそれに気が散った直後、焼夷弾の業火が研究員達を焼き尽くす。
それに驚いた残りの研究員が銃の引き金を引くが、目の前で炎が燃え広がっている中冷静に照準を合わせる事が出来ず、結果的にその銃弾はシグマの頬を掠るのが精一杯だった。
「あぶねっ!!」
シグマが叫ぶ。クレゾールがシグマに指示を出す。
「逃げるわよ!この炎が消えたら一気に蜂の巣にされるわ!」
そう言い二人は右側に急いで逃げる。それを研究員達は炎の奥で見ているだけしか出来ない者もいれば仲間が焼け焦げる様に失神する者も出た。その事もあってか逃げる事は彼らにとってそんなに難しくなかった。

その後シグマたちは通路で何度か戦闘になりながらある部屋までたどり着いた。銃弾は大分消費していた彼らにとってなるだけ戦闘は避けたい気持ちが募る。
「はぁ、はぁ……、……何とか着いたわね。」
クレゾールが息を切らしたとき、奥から足音。それに気付いたシグマとクレゾールは銃口を足音のする方向に向ける。

「まさか、君が私を裏切ろうとは……、私の理想が分からないと言うのかね?」
奥から現れた男が嘆くように言う。
「プリズム!!罪無き人の命を自分の都合で改造し、兵器にしようとした貴方の計画のどこが理想なのよ!!ただの野望でしかないのよ!!」
クレゾールがショットガンの引き金に人差し指が触れた時、プリズムと呼ばれた男が右手に持っていたリボルバー式拳銃の照準を一瞬でクレゾールの右腕に合わせ、二発発砲。
「!!」
プリズムの放った銃弾はクレゾールの右腕に命中し、痛さの余りショットガンを手放す。彼女の右腕から滴るは黒ずんだ赤色の体液。
クレゾールが顔をプリズムに向けると、目の前の銃口と目が合う。
プリズムはクレゾールに銃口を向けながら呟く。
「全く、君が無駄な真似をしなければ、私の手を焼くことは無かったのだよ。それ位考えてほしいよ。」
プリズムが喋っている間にクレゾールがシグマの目を見る。それを見たシグマが軽く頷いた後、呟く。
「全く、諦めのわりぃ女だ……。)

プリズムが一瞬の異変に気づき、シグマの方を向くや否や三発発砲。
その銃弾はシグマの足に当たる寸前で地面に埋まる。威嚇発砲だったのだろう。
 プリズムが舌打ちをしてシグマに照準を合わせようとしたその時。
「……チェック。」
 プリズムが後ろを振り返ると、左手にナイフを持ったクレゾールがプリズムの首にそれを突き付ける。
「ほう、面白い。だが!!」
プリズムがクレゾールに銃を突き付けようとした時、プリズムの背後にシグマが銃口を向ける。
「あんたを撃つのは、俺だ。」
 
プリズムがシグマに意識を向ける。クレゾールはそれを見ると言葉を続ける。
「貴方の銃は基本六発しか装填できない。貴方は私に二発、シグマに三発撃った。これで貴方の残り弾数は一発。ここでどっちかを撃とうとしても残った方によって貴方は殺されるのよ。リロード出来るものならしてみなさい?その間に貴方の首から血が吹き出るか後頭部に穴が開くわよ。リボルバー式の欠点を見逃していたわね。」
 「ふっ…、それはどうかな…、私の手には自爆スイッチが…。」
と言いつつプリズムがポケットを探るもその例のスイッチは発見できず、思わず焦り出す。
それを見たクレゾールはプリズムの目の前に自爆スイッチを見せつける。
「あら、貴方の探し物はこれかしら?これは私達が有効活用するから心配しなくてもいいのよ。」
「貴様!!いつの間に!?」
大声で驚くプリズムを余所にクレゾールは勝ち誇った表情で喋り出す。
「貴方がシグマに銃口を向けた時にポケットから落ちたわ。貴方の考える事だしその事は大方予想できたけど。」
その一言でプリズムが青ざめたように手から拳銃を放す。
それを見たシグマはその拳銃を足で上手くコントロールし、手でキャッチすると改めて銃口をプリズムの後頭部に突き出す。
「じゃあな、せめてもの最後をお前の一発残った銃で飾ってやる……。だからあの世で自分の罪を清算するんだな。」
シグマがそう言うとキャッチしたリボルバー式拳銃をプリズムの頭に向け、引き金を思い切り引く。

ドスッ!!

あまりの威力のせいかシグマは背中から思い切り倒れたものの、銃弾が頭部を撃ち抜き、綺麗に流れる血が全てを語るかのように流れだす。

そしてプリズムは崩れるかのように地に伏した。
それからもう二度と、プリズムが目を覚ますことは無かった。

それから数日後
「まさか、本当にやっちゃうとはね……。」
クレゾールは自分の右腕に包帯を巻いている状態で苦笑いを浮かべる。
「だが……。」
シグマは溜め息を吐いた後、苦笑いして喋る。
「まさか爆破オチまで用意してるなんてな、全く、気の利く野郎だ。」
そう呟いた後、クレゾールに質問を投げかける。
「で、そう言えば生き残りはどうしたんだ?あとアイツはどうしてこんな事を……。」
「生き残りは知らないわ。まずどうなろうが私はそれに口を出す権利なんて無いもの。第一、あの施設は私達の手で爆破させちゃったじゃない。アイツの事については元からそう言う性格だったのよ。支配欲は人一倍強いからね。」
作品名:∑-シグマ- 作家名:黒月