∑-シグマ-
クレゾールが一息つくと、数日前に爆破し、瓦礫と化した施設跡を眺める。彼女の心の中には使命を全うした達成感よりもこの事態に発展してしまった罪悪感の方が少しだけ強い気がしたと、シグマは薄々気付いていた。それは爆破の際、実験隊達を助けだせなかったからと言うのもあるのかもしれない。だがシグマはそれを口に出すことは無かった。自分も生存者として自分もその罪悪感を抱えているのだと、この件を通じて悟ったからだ。
「そう言えば逆に聞くけど、どうしてあの時アイツの銃で止めを刺したの?」
クレゾールがシグマに質問を投げかける。
「……最後の最後ぐらい、格好つけさせてくれよ。」
シグマがそう言うと、クレゾールが突然クスリと笑う。
「貴方、いつでも格好付けてるじゃないの。」
「おいおい……。で、どうするんだ?ちゃっかり爆破までした分、ここにいる意味などないだろ。」
「そうね、でもとりあえずこの事実は私達だけで封印しましょ。そうじゃなきゃこの国、終わっちゃうもの。」
「……だな、んじゃあ行きますか。……あての無い旅へ。」
「オーケー。」
そう言い終えると、一組の男女は森の奥深くの施設跡から誰も通らないであろう木々の間を敢えて歩き始めた。
その後、彼等の足取りは、誰一人として知る者はいなかった……。