とある短き年代記
☆ ☆ ☆
「なぁ、俺と付き合ってくれないか?」
「いいわよ」
宇宙に出てから十年。ついに宇宙船は目的地である惑星に到着した。先行していた船の環境機構が既に、惑星の環境を地球並みに整えている。美しい、蒼い惑星だ。
出発した当初は一万人だった宇宙船の人口は、今や一万と跳んで百三人になっていた。
驚いたことに、その増えた人口のうちの三人は俺の子どもだ。正確に言うと俺と彼女との子どもだ。彼女の勘違いで俺の一世一代の告白は一緒に同僚として働く誘いとして受け取られてしまったのだが、運命の女神という奴は気まぐれらしい。まぁ、俺にとっては女神イコール彼女なのだが。
しかし、俺たちの任務は達成された。選択肢は二つ。地球への帰還か、全てがこれから始まる新しい惑星への辛く厳しいであろう永住か。
蒼く美しい惑星を目にしたときに、俺の気持ちは決まっていた。
「ねぇ、ところで私は、いつまであなたに付き合えばいいかしら」
胸に抱いた赤子をあやしながら、彼女は微笑みを浮かべている。
「できれば……、孫のそのまた孫の顔を見るまで君と子どもたちと一緒に、ここで生きていきたい。この美しい惑星を護りたいんだ」
彼女は二度ほど瞬きをすると、笑みを濃くして答えた。
「ねぇ、あなた、そういう『プロポーズ』はもう少し早めに言うものだと思っていたのだけど?
少なくとも、子作りをする前に」