とある短き年代記
☆ ☆
「ねぇ、私と付き合ってくれない?」
「……いいよ」
卒業と同時に相棒として共に超光速宇宙探査船に乗り込むことになってから五年。訓練校での出会いから数えたら八年目。彼は、顔はゴツイけど根は真面目でなかなかいい奴だ。加えて暢気でのんびり屋で重度のお人好し。
一万人の乗船員の中でたった二人のスペシャリストとして探査船の全てを管理している私たちの日常は日々戦争のようで、さすがに最も敬遠される進路なだけはある。何故この道を選んだのかというと、つまるところ何も将来を考えていなかった私をこの船に誘ったのが『宇宙の果て』に憧れる彼だったというだけのこと。未だに自分の夢とか将来ってのがピンとこない。
旅立ってからしばらくはお互いに慣れなかったけど、今では誰よりも彼を信頼している。そう、いつの間にやら、私の中での彼はかけがえのない大切な人になっていた。だから、うん、『そういうこと』を考えても、別に、おかしくは、ない。どうやら私は本気だ。
「なぁ、ところで俺は、どこまで付き合えばいい?」
私は、盛大に溜め息を一つ吐いた。この鈍感頭は。
「言わないとわからないの?」
私の部屋のドアが、音もなくスライドした。