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君と僕とあの夏の日と

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入部してからの理桜は一年生ながらめきめきと頭角をあらわし、夏前の地区予選では補欠出場出来るまでの実力をつけた。
ポジションはかねてからの希望だったレフト。
身長こそ先輩達には遠く及ばない理桜だったが、持ち前のジャンプ力で高さをカバーし、
部内での最高到達点をいつしかマークするようになった。
連日行われるスパイク練にも参加するようになり、アタックラインよりも内側に落とすことが出来る鋭角スパイクを
習得してからは、一年生といえど部内での注目は上がっていった。
そして夏前の大会に補欠で選ばれ、試合の流れを変えるためのピンチサーバーとしてその背番号が呼ばれた。
交代のために先輩と手を合わせた数秒間の緊張はこれから先も忘れないと思う。
何のために今自分が呼ばれたのか、自分がしなければならないことは何か、それを張り裂けそうな緊張と高揚の中、
審判から流れてきたボールを手に取り深呼吸をする。

見つけた

ネットの向こうに広がる相手コートを数秒間見つめ、守りが手薄になる箇所を弾き出す。
そこに狙いを定め、左手に持ったボールを一気に天井高く投げては間髪入れずにラインぎりぎりまでステップを踏んだ。
後ろに引いた右手が落ちてきたボールを捉えた瞬間、ありったけの力を込めて右斜め上から一直線に打ち落とす。
理桜は毎日朝練、昼練、放課後と欠かさず練習して習得した高速無回転のジャンピングサーブでサービスエースを取り、
連続サーブポイントを重ねると、流れは一気にこちらのペースとなり、そのまま第3セットまで取りきった。

湊川、夏の本戦出られるか?

と監督から聞かれたのがつい数日前のこと。
今のところは補欠で選手登録をしておくが、今後の練習次第ではスタメン切り替えもあるとのことで、
理桜はその日以降の練習にこれまで以上の力を注いでいた。

「今頃3メンしてるのかなぁ」

理桜はうだるような暑さの中、2階の教室から見える体育館の開け放たれたドアを見つめた。
ナイスカット、と大きな声がこちらまで聞こえてくる。
本当ならあの一本を上げるのは自分だった筈なのに、と今更ながらに悔しさがこみ上げてしまう。
別に自分の取った行動を後悔している訳ではない。
あの時自分が手を差し伸べなければ、彼女はもっと酷い怪我をしていただろうから。
けど、タイミングが悪すぎる。
作品名:君と僕とあの夏の日と 作家名:テトラ