式部の噂
なんともシンプル。
私たちの部屋はそんな感じだ。
ムキダシのコンクリにシンプルで無駄のない家具たち、黒とグレーと白が基調のモノトーンな雰囲気。
なんて母さんは男らしいんだろう。
ベットは私と母さんのがふたつ並んでいる。
「本当はちゃんと二部屋作るつもりだったんだけどさ、法さんに資源の無駄だって言われちゃった。」
父さんが頭をかきかき説明した。
なるほど、一人で泊まるには少し広すぎる部屋だ。
「…よい部屋ですね」
私は心からそう褒めた。
でもどっちかというとリビングやキッチンのやわらかな部屋のが好きだった。
父さんはありがとうと言いながら、「でも僕はもうちょっとやわらかくてもいいかなぁ」と答えた。
なんだか嬉しい自分に驚く。
母さんと違う意見なのに喜んでるなんて初めてだった。
そしてその小さな変化に動揺する。
(やっぱり…このかっこいい部屋のがいいや。)
でないとかっこいい女になれない。