Transsexualism
ある日、母親がにこやかに病室を訪れた。
「はるか、転校しましょう。他の誰もはるかを知らない学校に。いい学校が見つかったの。きっと気に入るわ」
母親が見つけてきたのは、寮のある遠方の学校だった。病気を理解しない父親と、はるかを引き離すための措置だった。
一月、冬休みが明けたその日に、はるかは転校した。
学校は共学だったが、はるかは男子として入学した。寮も、男子寮だった。
「高瀬はるかです。よろしく」
転校初日、挨拶をするまで本当に自分が男としてやっていけるのか不安だった。だって、心は男だったけれど、体は女だったから。けれど、そんな不安は杞憂でしかなかった。
「高瀬はY県から来たんだって? 俺と同じ。よろしくな」
「後で校内案内してやるよ」
休み時間、ものめずらしそうに寄ってきた男子はごく、普通だった。たわいもない会話。他の男子と同じように、気兼ねもせず振舞われる。誰も、自分を女だと思わない。ほっとした。
作品名:Transsexualism 作家名:日々夜