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大人のための異文童話集1

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幾度となく雨で固められた土。
それはとてもとても固く、爪の中には砂が入り込んで痛い。
それでもボクは諦めないんだ。
このドキドキが止まるまで、決してボクには諦めることなんて出来ない。

掘り起こすたびに指先に、チクリとした痛みが走るけど、そんなのは平気さ。
頭の中も心の中も、そうして掘り起こして出てきた、大きな宝石の原石のことでいっぱいなんだ。

気がつくとどの指からも血が流れ出していた。
それでも夢中で掘る。
痛みはあるけど、その痛みがそのうちに喜びを運んで来てくれるんだ。
とにかく余計なことを考えちゃいけない。
ただ掘ることだけを、あの宝物のことだけを…いまは考えるんだ。

ほどよい程度まで堀起こしはしたのに、一向に抜け出る気配がしない。
それでも力一杯に、掘った穴に手をいてたとき、ブスッという音が掘っている手から脳に聞こえた。
さすがにこれは痛い。
涙が出て来る。

唇を噛み締めながら、鼻水を啜りながら。。ボクは…。

ポケットの中でクシャクシャになっていたハンカチを取り出して、トクトクと血が流れ出すその手に巻いたんだ。
どれくらいの時間掘ったのだろう。
もう日が西に傾いて、雲もボクと同じように血まみれになっていた。

でも、明日はないんだ。
ボクだけの大切な宝物。
他の誰かに絶対に渡さないし、知られたくもないから。

そんな念いが走るとき、ボクがちょっぴり諦めかけているかも知れないと気付く。

どうして取れないの?
こんなに一生懸命になって掘り起こしたし、もうこんなに見えているのに。
傷ついた手や指の痛みなのか、それとも悔しさなのか…。
涙が出て来て止まらない。