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大人のための異文童話集1

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第3話 眠り姫



それはもう遠いむかし。
ボクは何でもお気に入りを見つけては宝物にしていた。
そんな宝物の中でも一番のお気に入りは、この小さなガラスのカケラ。

どこもかしこもが、いまのようにアスファルトやコンクリートではなかった頃、そのガラスは土の中に深々と埋まってたんだ。

深い緑色がとても綺麗で…。
いま思えば、あれはJ&Bのウイスキーボトルだったのかもしれない。
しかしそんなことはどうでもいい。
具体的にハッキリとはしないから、思い出として美しいままなんだ。

そのガラスのカケラは道路の端に落ちていた。
いつからなのか…きっと沢山の車に曳かれ、雨に濡れては転がって、数え切れないほど地面で擦れてしまったんだろう。

ボクが見つけた時にはもう角の鋭角さもなくなって、まるで宝石の原石のよう見えたんだ。
そう、エメラルドよりも深くメノウよりも霞んでいる宝石のカケラ。

ボクはそれを拾って持ち帰り、きれいに洗い流した後でタオルで磨いた。
何度も何度も、いつでもどこでも…本物の宝石になるんだと。

そうしてるうちに、もっと沢山それが欲しくなってくる。
ボクは矢も盾もいられなくなって、今度はそれと同じものを捜して歩いた。

そのうちに、道路から少し入った空き地に埋まっている、カケたガラスビンらしきものを見つけたんだ。
近寄ってみるとそれは、間違いなくあの宝物と同じ色の鈍い光を放っていた。
ボクはとても嬉しくなっていた。

それこそもう、ドキドキしながら夢中で掘った。
それが危険なガラスであることも忘れて…。
とにかく夢中になって、両手で土を掘り起こしたんだ。