小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」
秋月あきら(秋月瑛)
秋月あきら(秋月瑛)
novelistID. 2039
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

大魔王ハルカ(旧)

INDEX|42ページ/48ページ|

次のページ前のページ
 

 次の瞬間、宇宙空間に設置してあった超巨大魔導砲が発射された。
 巨大な光の柱がアステアの上空を掠め飛び、巨大な風を巻き起こし、上空の空気を掻っ攫い真空状態にした。
 真空状態になったことにより、そこに空気が一気に流れ込み、地盤が浮き上がり、建物が上空に吸い込まれ、人々も、看板も、洗濯物で干してあったステテコパンツも飛んでいく。大惨事だった。
 モニターを見ていたハルカは口に出してはいけないことを心の中で呟いた。
「(カーシャさんやりすぎ……この人魔女)」
「さすがは魔女だね(ふっ)」
 無表情な顔についた口が一瞬だけ歪み、すぐに無表情に戻る。大惨事を目の当たりにして、無感情な顔をしているローゼンクロイツは、十分悪だ。
 この中で顔を真っ青にしている人間的な普通人はハルカだけだ。ちなみにルーファスは未だ床にうずくまり、アステア王国を襲った大惨事を知らない。
「さて、相手の出方を伺うとするか(これこそ私の憧れていたものだ……ふふ)」
 これにてカーシャの演説は終わった。
 沈黙が流れる。――ハルカは気づいた。
「今のってカーシャさんが世界征服するみたいじゃないですか? あの、私が征服しないとダメなんじゃないんですか?(完全に脅しだよね……)」
 びびっとひらめき、ローゼンクロイツは手を叩いた。
「じゃあ、こうしよう(ふあふあ)。魔女はハルカの補佐で、実際に動くのが魔女で、裏で糸を引いているのがハルカっていう設定にしよう(ふにふに)」
 これって完全な悪役だ。ハルカの大魔王への道は着実に向こうから勝手にやって着ている。ビバ大魔王ハルカ。


 アステア王国を襲った大惨事は世界各国に瞬く間に広がった。世界滅亡が迫っていると誰もが確信した。ちなみにアステア王国はつい先日にも大魔王によって滅亡の危機にさらされた――今年はアステアにとって厄年だ。
 アステア王国ヴァルハラ宮殿――今ここでは国の要人たちが集められ緊急会議が行われている真っ最中だった。
「君たちをここに集めたのは他でもない、またこの国は、いや、世界はあのカーシャという人物によって滅亡の危機にさらされている」
 ずいぶんと重い口調で現国王クラウスは言った。
 あの時、フォログラム映像で顔出していたのはカーシャだけであったために、カーシャが世界征服を企んだことになっている。……企んでいたのは事実だが。
 カーシャの前にフォログラム映像で演説をした黒猫(ハルカ)とローゼンクロイツが、カーシャと何か関係があるのではないかという話が持ち上がったが、とにかく今はカーシャの居所を探ることが先決とされた。
 会議で即刻カーシャ討伐隊が編成され、国中が騒然とした雰囲気に包まれた。
 クラウスの表情は重い。
「被害状況はどうなっている?(大魔王ハルカの時よりも被害は大きいか?)」
 国王の問いに席を立った男が深刻な顔をして答えた。
「被害状況は東地区から西地区にかけて及んでいるようですが、詳しい被害状況については現在調査中です」
 実際の被害状況は大魔王ハルカの襲来よりは少ない。今回の被害は大型台風が直撃したときの被害状況に酷似している。
 少しの間クラウスは考え込み、エルザ元帥に視線を向けた。
「エルザ元帥、カーシャの素性調査はどうなっている?」
「魔導学院で教員をしていた以前の経歴は一切不明です」
 魔導学院時代のカーシャのことはクラウスもよく知っている。なぜならば、彼もエルザと同じように魔導学院でカーシャの授業を受けていた生徒だったからだ。
 エルザ元帥は話を続けた。
「ルーファスという人物がカーシャと親しいようで、彼ならば何か知っているかもしれません(いや、絶対ルーファスならば、あの女狐の過去を知っている)」
「では、そのルーファスという男に話を聞いて参れ(ルーファス……か)」
 クラウスはルーファスと同い年で、魔導学院時代は仲のよかった友であった。
 会議が終わり人々が部屋の外に出て行く中、エルザはクラウスによって呼び止められた。
「エルザ元帥、この場に残ってくれ、大事な話がある」
「……(私に話?)」
 部屋に二人っきりになったところでクラウスはゆっくりは話し始めた。
「今は国王と元帥の関係を抜きで、君と話がしたいエルザ?先輩?」
「……わかった(先輩か、懐かしい響きだ)」
 魔導学院時代、クラウスとエルザは後輩と先輩の関係であった。二人の口調もそのためか少し砕けた感じだ。
「僕は今回の事件――僕自らカーシャの元に出向きたいと思っている(ルーファスやカーシャが事件に絡んでいるなら、僕が行かなくてはいけない)」
「それはできないことだ。国王が危険に自ら飛び込むなど、誰も許してはくれない」
「だから、君に一緒に来て欲しい。この城を隠密で抜け出すにはエルザの力が必要なんだ」
「昔からクラウスは一度こうと決めたら意見を曲げないからな。仕方ない、私の首をかけてクラウスの供をしよう(これで、クラウスにもしものことがあったら、私の命だけでは償えんな)」
「すまないエルザ」
 決意を胸に秘めてクラウスは窓の外を見た。
「(もし、ルーファスがカーシャ手助けをしているのならば、僕は自らの手でルーファスを捕まえる)」
 この日、カーシャ+おまけVSアステア王国を先陣とした世界の全面戦争の火蓋が切られた。