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秋月あきら(秋月瑛)
秋月あきら(秋月瑛)
novelistID. 2039
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大魔王ハルカ(旧)

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「あの、あなたたち何ですか? ローゼンクロイツさんと関係ある人?(っていうか関係ありすぎな格好してるけど……)」
 アインが一歩前へ出て答えた。
「私たちは薔薇十字団のメンバーで、ここが襲撃された場合に備えて待機していました(まさかホントに襲撃されるなんて思ってみなかったけど)」
 まさか襲撃されてしまったのはカーシャが結界を解いたせいだ。
「それでは本部にお連れします」
 そう言ってアインがハルカを抱きかかえると、ツヴァイはルーファスとカーシャにある衣装を渡した。
「これを着て変装してください。追っ手にバレると大変ですから」

 渡された衣装は修道士の物であった。ケープを羽織りドミノと呼ばれる頭巾を被ったルーファスとカーシャはどこから見ても修道士、何の変哲も無い。
 完璧に修道士になりすましたルーファスとカーシャは近距離戦闘班と共に街中を歩いていた。
 アインは先程から人々が自分たちに微妙だが注目しているのに気づいた。
「(完璧な修道士の変装が見破られてるのかしら?)」
先程からしつこく言っているが、?修道院?の変装は完璧だ。ただ、空色ドレスの三人娘は異様に目立っていた。
 人々の視線を浴びながらハルカたちは花屋さんの前に来た。色とりどりの花がいっぱい置いてあり、その花々に囲まれた花のように美しい女性店長がいた。
 ハルカを抱きかかえたままアインは花屋の店長と話し始めた。
「薔薇を1万本いただけませんか?」
「白にしますか、赤にしますか?」
「知るかんなもん、バッキャロー!」
 突然人が変わったように怒り出したアインだったが、女店長は怒ることなく応じた。
「どうぞ、こちらへお入りください」
 一部始終を近くで見ていたハルカは何なんだかわからなかった。
「(何今の? アインさんにあんなこと言われて怒ってないのかな? 実は内心でははらわた煮えくり返っていて、お店の奥に連れ込まれて、あ〜んなことやこ〜んなことされるんじゃ!?))」
 ハルカ善からぬことをいっぱい想像したようだが、今の実は合言葉だったりする。
 女店長に続いてぞろぞろとハルカたちはお店の中に入って行った。
 お店の中は外から見た時より広い。異様に広い、やけに広い、広すぎる。
 部屋がたくさんあり、廊下もかなり入り組んでいる。
 長い廊下をずいぶんと進み女店長の足がドアの前で止まった。
「このドアの先です」
 頭を下げた女店長にアインは礼を言うとドアの中に入って行った。他の者もそれに続く。
 ドアの中は明らかに花屋の店内ではなかった。ここが薔薇十字団本部だ。
 薔薇十字団の本部であることをアインに告げられ一行は本部内を観光案内風に案内された。
 まず、最初に連れて来られたのは何かの製作所らしき場所。ここには作業着を着たたくましい男たちが、なにやら大きなブロンズ象を磨き上げていた。
 ブロンズ象は明らかに猫と形をしていて、その大きさは横に5mほど、高さは土台も合わせると10mはあるブロンズ象だった。
 思わずハルカは猫つながりということで親近感を覚えた。
「アインさん、あのブロンズ像は何なんですか?」
「あれはハルカ様のブロンズ像で、50ほど製作して各国の主要都市に送りつける予定です」
「あれって私なの!?(てゆーか、送りつけるってどういうこと)」
 アインは両手を合わせると理想を夢見て遠い目をした。
「ハルカ様が世界を統治された暁には、あのブロンズ象が世界各国に……(あぁ、ねこねこファンタジィ〜)」
 アインは少し危ない世界に入っていた。
 ツヴァイとドライは何故かここで声を合わせて掛け声をあげる。
「「ねこねこファンタジィ〜!」」
 3人娘は少し危ない世界に入っていた。
 ローゼンクロイツの猫返りといい、この近距離戦闘班のねこ耳3人娘たちといい、ハルカを神として崇めようとしていることといい、もしや、薔薇十字団って猫を崇める新興宗教なのか!?
 ハルカとルーファスは、ここを出る頃には催眠療法に引っかかって高額商品を買わされていそうな気分になった。
 次に案内されたのは、民間人から集った戦闘隊員の訓練場だった。ここでハルカは凄まじい光景を目の当たりにすることとなった。
 訓練場にいる人たちは何故かみな猫のきぐるみを着て、それが300人ほどいる。ふざけているとしか思えない光景だった。
 ハルカはこの訓練のことには触れないでおこうと思ったが、ルーファスは聞きたくて聞きたくてしょうがなかった。
「(どうしようかな、聞きたいけど触れない方がいいような……)あの、この訓練って何ですか? というより、なぜ猫なんですか?」
 ルーファスはついに禁断の扉を開けてしまった感じだ。
 質問に答えてくれたのはドライだった。
「ここに集ってくれた者たちは家庭を持った一般人であります。ですから顔を隠すためにきぐるみを着ているのでありますっ!(敬礼!)」
 以前ネコのきぐるみを着て国立博物館に侵入したことのあるルーファスはなるほどとひとり納得した。
 だが、この後誰もが予想だにしなかった展開が!
 ツヴァイはネコのきぐるみ軍団の前に立つと、
「ねこねこファンタジィ〜!」
 と言って、ぽぁぽぁ〜とした感じで拳を高く上げた。するとネコのきぐるみ軍団も同じように拳を高く上げて叫んだ。
「ねこねこファンタジ〜!」
 こちらの声は低く唸るような声でちょっと男臭かった。むしろ恐い。
 唖然としてしまっているハルカとルーファスを後目にカーシャはツヴァイを押しのけてネコのきぐるみ軍団の前に堂々と立った。
「ねこねこファンタジ〜!(……意味のわからん言葉だ。でも、おもしろい……ふふ)」
 カーシャが拳を上げて抑揚の無い声で合言葉を叫ぶと、
「ねこねこファンタジ〜!」
 また低く唸るような声が返って来た。やはり恐い、不気味だ、変態だ。
 カーシャはカーシャスマイルを浮かべた。
「(……ふふ、おもしろい)ハルカもやってみたらどうだ? 神なのだから、ちょうどいいのではないか?」
「(なんで私が? こんな恥ずかしいことできるわけないじゃない)」
 ハルカを抱きかかえるアインは何かを訴えるような熱い眼差しでハルカを見ている。そして、残りの2人のねこ耳娘もハルカの前にささっと立った。
 アイン、ツヴァイ、ドライの順番でハルカに熱いエールを送った。
「ハルカ様ぜひお願いいたします!(ねこねこファンタジ〜をぜひ!)」
「ハルカさまぁ〜!(プリティ〜ボンバーでよろしくお願いします!)」
「自分からもお願いであります!(ハルカ様のねこねこファンタジ〜が見たいであります!)」
 ハルカに有無を言わせぬままにアインはハルカを抱きかかえたままネコのきぐるみ軍団の前に立った。
「ハルカ様、どうぞ!」
「(どうぞって言われてもなぁ)」
 ここにいる皆がハルカに注目している。しかも、ネコのきぐるみ軍団は顔こそ見えないが、ハルカへの想いはアイドルを追っかける危ない人たちと同じオーラを発しているように思えた。
「(……このネコさんたち恐いよ、言わないとなにされるかわかんないから)……ねこねこファンタジ〜」
「ねこねこファンタジ〜!!」