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秋月あきら(秋月瑛)
秋月あきら(秋月瑛)
novelistID. 2039
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大魔王ハルカ(旧)

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第5話_人間になりたぁ〜い!


 戦場(カーシャVSファウストの現場)から、そーっと逃げ出したルーファスはある先生の研究室のドアの前に立っていた。その横には携帯用ペットハウスから出たハルカがいる。
 ルーファスが魔導学院に着た理由はハルカを元の姿に戻すことと、元の世界に戻すための手がかりを見つけるためである。カーシャは暴れに来るのがメインだったみたいだが……。
 今ルーファスの前にあるドアに思いを馳せるルーファス。ドアフェチなのではなく、思い出があるからだ。
「学生時代ここのドアを壊して、パラケルスス先生のホムンクルス盗みに来たんだよ(あの時は大変だった)」
「器物破損に窃盗、ルーファス昔はワルだったの?(意外だなぁ)」
「ち、違うよ! ドア壊した(蹴破った)のはローゼンクロイツっていう私の友達だし、ホムンクルスを盗んだのも理由があって……カーシャに盗むように言われたから……」
 昔からルーファスはカーシャにいいように使われていたらしい。つまり学生時代から、ルーファス<カーシャの構図ができていたということだ。ルーファスかんばれ!
「ところで、そのホムンクルスって何?」
「ハルカを元の身体に戻すことができるかもしれない魔導具、詳しくは中で話すよ」
 コンコンとノックをしてルーファスは部屋の中に入った。
「失礼します」
 とお辞儀をして、ルーファスが顔を上げるとそこには初老の男が立っていた。
「おお、ルーファスか、久しぶりじゃな」
 笑みを浮かべる老人にルーファスは近づき握手をした。
「お久しぶりです、パラケルスス先生」
「魔導の勉強は今もちゃんとしているのかね?(実力ならば、学院でもローゼンクロイツの次じゃったからな)」
「もちろんです、でもまだまだ力不足で苦労してますけど……」
 そう言ってルーファスはドアのところにちょこんと座っているハルカを見た。
「あの猫がどうかしたのかね?」
「それがですね……。ハルカちょっと来てくれるかな?」
 しなやかな足の運びでパラケルススの前まで来たハルカは頭をちょこんと下げて挨拶をした。
「こんにちわ、ハルカっていいます」
 パラケルススはハルカをじーっと”視て”それがなんであるのかを言い当てた。
「ふむ、今は猫の姿をしているようじゃが、マナは人間のものじゃな? どういうことか説明してくれないかね?」
 ――ということでルーファスは、ハルカを異世界から召喚してしまったことから、大魔王になって大暴れ、終いにネコになってしまった経緯を全部一通り話して説明した。
 初老のパラケルススは深くうなずくと、
「それでわしはなにをすればよいのじゃ?(察しはついておるがの)」
「先生にはハルカのホムンクルスを作って貰えないかなと……?」
 ハルカも熱い眼差しでパラケルルススを見ている。だが、ハルカはホムンクルスがなんだかわかっていない。
 期待は裏切られるとショックを受ける。
「この子のホムンクルスを作る材料が1つだけ手に入らなでな。ホムンクルスは作れんのじゃ」
「ああ、やっぱり(肉体が滅びてるもんね)」
「ええ〜っ!!」
 ハルカだけショック!!
 ショックは受けたが、まだハルカはホムンクルスがなんだかわかっていない。
「ところでホムンクルスって何?(なんとなく話合わせてたけど)」
「え〜と、ホムンクルスっていうのは……先生、説明お願いします」
 ルーファスは困るとすぐに近くにいた人を見つめて助けを請う習性がある。助けを求められたパラケルススは大きなガラスの筒を指差した。
 部屋に幾本もあるガラス管の中は液体のような物で満たされ、下から小さな気泡が上へ上がっている。そして、時折大きな泡が人の形をした物の口から吐き出される。
 ホムンクルスを見たハルカは至極もっともな見たまんまの質問をした。
「人間?(人体実験!?)」
「あれがホムンクルスじゃ。簡単に説明すると人間の形をした入れ物じゃな」
 人間の入れ物と説明されて、ハルカようやく納得。
「ああ、なるほど。そのホムンクルスで私の身体を作って入るのか……でも、私のホムンクルスを作れないってどういうこと?」
 ルーファスは最初からわかっていたらしく、簡単な説明を始めた。
「ハルカのホムンクルスを作るには、ハルカの肉体の一部が必要なんだよ、でも、肉体もうないからね(パラケルスス先生ならどうにかなると、思ったけど無理か、やっぱり)」
ハルカショック!!
「やっぱり、人間に戻れないの? あのさぁ、今思ったんだけど、ネコじゃなくってそっちのホムンクルスに移してくれるかな?(人間のほうが動きやすいし)」
「それは止めておいたほうがよいな」
 ハルカの意見はパラケルススに即答で弾かれた。ちょっと納得のいかないハルカはパラケルススに詰め寄った。
「どうしてなの?」
「マナ移しの儀は大変難しい魔術でな、移された本人のマナに過度の負担を与え、それに加え君を猫の身体に移せたのは奇跡に近い。つまり、何度もマナ移しの儀をすることはお勧めできないのじゃ」
「そうなの?(ってカーシャさんは簡単にやってのけたけど、もしかしたら失敗してかかもしれないってこと……ってことよりも、だったら最初から人間の身体に入れてくれればよかったのに!)」
 人間の身体ではなくネコの身体に入れたのはカーシャの趣味と言えばそれで終わってしまうが、本当の理由は急を要していて、完全な状態で保存してある肉体がネコと出目金しか手元になかったからだ。完璧な保存状態でない肉体を使うと儀式に失敗する可能性が高くなる。
 もうハルカは大ショックだった。人間には戻れないし、元の世界にも帰れないし……。
「もう、一生この世界でネコとして暮らすのか……(お母さんとお父さん、友達……みんな心配してるよね)」
 目に涙をにじませるハルカを見てルーファスは何も言えず、パラケルススは何か言い方法がないかと一生懸命頭を悩ましている。
「髪の毛一本でもあればよいのじゃが……」
 パラケルススの言葉を受けてルーファスが意識せずにハルカに止めを刺した。
「私の家の周辺は全部一度倒壊してしまったから、髪の毛すら残ってないな……」
 ハルカ的大ショック!! ルーファスの発言、それは絶対人間に戻れません宣言をハルカに突きつけたのと同じだった。
「(どうせ、私は一生ネコのまま……)でも、せめて元の世界に戻りたいな……元の世界に……元の世界の私の部屋だったら私の髪の毛一本くらい落ちてるかも?(望みは薄いけど)」
 ワラをも掴むような発言だった。たしかに髪の毛一本くらいなら落ちてるかもしれない。
 元の身体に戻る手立てが絶たれてしまった以上、今は元の世界に帰ることだけでも……ネコのままで?
 ルーファス&ハルカはいいアイデアをもらうべく、パラケルススのほうを同時に振り向いた。
「ハルカを元の世界に戻す方法ありませんか?」
「お願いします!」
 お願いされてもとパラケルススは困ってしまった。パラケルススは今学院の教頭をやっているほどの魔導の使い手だ。しかし、それでもできないことは山とある。魔法は万能ではない。
「わしにもこの子を元の世界に送り返す手立てはわからんな。普通の召喚だったらできるだろうが、どこの世界との知れない住人となれば話は別じゃ」