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秋月あきら(秋月瑛)
秋月あきら(秋月瑛)
novelistID. 2039
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大魔王ハルカ(旧)

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第4話_大暴れしちゃいました


 緊迫、そして沈黙――。
 カーシャVSファウストの構図がわかりやす〜く出来上がっている。
 その二人に挟まれてしまったルーファス+ネコ一匹。彼らの方が明らかに焦っている。特に冷や汗をかいているルーファス、焦りすぎ。
「カ、カーシャもファウスト先生も仲良くしてください(巻き添えで殺される!)」
 空気がキン! と冷えた。カーシャの瞳は妖々と冷たく輝いていた。
「ふふ、まだ……(まだ、何にもしてない)」
 ファウストの周りの空気が圧縮され、一気に解き放たれることにより風が巻き起こった。教室に吹き荒れる強風にルーファスは反射的に顔を腕で覆った。
 強風で筆記用具が空を飛び、椅子がガタガタ揺れ動き、備え付けの机までが軋む中、カーシャとファウストだけは平然と立っていた。しかも、ファウストは不適な笑みを浮かべている。
「私たちはまだ何もしていませんよルーファス。ねえ、カーシャ"先生"?」
 その場で身動きできないルーファスは思った。
「(思いっきりしてんじゃん!)」
 ルーファスのそんな思いなんてどうでもよく、新たな波が押し寄せようとしていた。そっちの方が大事だ。
 無表情でファウストを見ていたカーシャの眉がピクッと動いた。
「ファウスト先生。私はもう”先生”ではない(……ワザとだな……ふふ、おもしろい)」
「なるほど、そうか今は先生ではなくて、”ただの”一般人だった、これは失礼。カーシャはここを”クビ”になってから非合法の魔導ショップをやっていらしたそうですが、今は営業停止らしいですね。困ったことがあるならいつでも相談に乗りますよ」
 そう言いながらファウストは鼻で笑った。完全のカーシャを見下していた。
 だが、ルーファスにしてみれば、二人は同じ穴のムジナ。どっちもどっちだった。
 今ここにいるムジナは互いのことを見下している。自分の方が格が上だと思っている、そーゆー人種だった。
 部屋の空気が一層冷たくなったような気がする。――気のせいではないようだ。ここにいる巻き込まれちゃったルーファスはそれに気付いた。
「あ、あの〜……教室に霜が……(気温が0度切ってるってことでしょ?)」
 ガタガタと寒さと”何か”で振るえ始めたルーファスの言うとおり、教室の壁や床には霜が発生していた。その発生源は言うまでも無いカーシャを中心にしてだ。
 カーシャの眉がぴくっと動いた。その瞬間、床、壁、そして天井から巨大な氷針が幾本も突き出した。
「はぶっ!!(な、なに!?)」
 ルーファスはあられもない声を上げて、紙一重で氷の刃を『つ」』や『大』の字になったりして避ける。そして、氷に挟まれて『と』の字になって動けなってしまった。冷や汗も凍ってしまっている。
 カーシャとファウストは氷の刃が顔すれすれ数ミリのところを通るが、顔色ひとつ変えず身動きも全くしていなかった。
 氷が少しづつ溶け始めた。この現象の中心はファウストだ。彼の身体から漆黒の炎がオーラとして放たれているのだ。
 嫌な戦い方だ。微妙でネチネチしているし、直接攻撃は微妙だがまだない。だが、ファウストがついに仕掛けた。
「そうだ、カーシャに貸した1000ラウル返して貰ってないのですが、返済期限が切れているのはご存知でしたか?(契約の名のもとにカーシャを冥府に送ってさしあげますよ……クク)」
 ちなみにラウルとはこの国で使われているお金の単位で、1000ラウルを日本円に換算すると1万3000円になる。
「1000ラウル、知らんな(……ちっ、覚えていたのか)」
 カーシャは確信犯だった。確実に借りたお金を踏み倒す気だったらしい。
「シラを切っても意味はありませんよ。ここにちゃんと契約書があります(シラを切るのは予想済みだ)」
 そう言ってファウストは、どこからともなく契約書を出し、カーシャに見せ付けた。それの一節にはこう書かれている、『契約を破った場合は魂を持って償う』と。――つまり、契約を破ったカーシャは殺されるということだった。
 契約書を見たカーシャはしばし沈黙。
「…………(焼くか)」
 沈黙して考えた結論はわかりやすかった。『焼く』、つまり、契約をなかったことにする気だった。
 カーシャの右手がスゴイスピードで動いた。
「ルーファス避けろ!」 
「えっ!?」
 行き成り避けろと言われても、そう避けられるものでもない。
 カーシャは声と同時に炎の玉を放っていた。それは契約書の向かって放たれたものだったのだが、途中の障害物に見事ヒット!
「あちぃ〜っ!!」
 ルーファスが炎上。炎の玉はルーファスの服に引火してしまった。すぐさま彼は床にへばりついた。それはなぜか? 床は氷が溶けて水浸しになっていたからだ。
 シュ〜っという音を服から立てながら立ち上がるルーファスを見てカーシャが小さく呟いた。
「ちっ……外したか(契約書を燃やしてしまおうと思ったのだが)」
 言うまでもないが、カーシャは自己中である。
「契約書を燃やそうとしましたねカーシャ? そういうことをする子はお仕置きですね(クク……悪魔でも呼び出しましょう)」
 悪魔の笑みを浮かべるファストの持つ契約書が風も無いのに揺れた。それも激しく、激しく揺れ、中から巨大な影がこの世界に召喚された。
 契約書の中から現れた悪魔は、赤黒い身体を持ち、丸まった背中から漆黒の翼を生やし、金色の目でカーシャをギロギロと見ていた。
 危険を察知したルーファスはしゃがんだ。彼の判断は正しかった。カーシャの口元が歪んだ。
「ホワイトブレス!!」
 氷系の高位魔法をぶっ放した。カーシャは教室内で強力呪文をぶっ放したのだ。
 ブォォォッッッ!! 濃縮された吹雪が悪魔に直撃! 悪魔凍る。おまけにルーファスの心も凍る。
「カ、カーシャ!! なにすんだよ!!(死ぬかと思ったぁ〜!!)」
 だが、ルーファスに言葉にはカーシャは何の反応も示さず、その場から消えた。次にカーシャが現れたのは凍ってしまって身動き一つしない悪魔の目の前だった。
「ふふ、儚く散れ!」
 カーシャの回し蹴りが悪魔に炸裂! 粉々に砕け散る悪魔。砕け散った氷が煌くその先でファウストは微笑していた。
「なかなかやりますね。ですが、カーシャが死ぬまで悪魔はいくらでもでますよ。早く1000ラウル返したほうが身のためですよ(私としては、このほうがおもしろいですがね……クク)」
「1000ラウルなんて借りた覚えは無い!!」
 カーシャはきっぱりはっきり断言した。『嘘は認めたが最後』これがカーシャの信条だ。
 契約書が激しく揺れ、中からたくさんの影が召喚された。
「覚悟なさいカーシャ!!」
「ヤダ」
 室内は只今、ホラーハウス状態。悪魔で満員だった。
 カーシャ逃げる準備OK。
「逃げるぞルーファス!!(流れ解散〜っ!!)」
 カーシャは自らに運動能力を一時的に2倍にするクイックという呪文をかけて走り出した。ルーファスも逃げる必要はないように思えるが、クイックで逃走。
 廊下を走り抜けるカーシャとルーファス。
 ルーファスが走ると、持っているペットハウスが激しく揺れる。中にいるハルカは当然ご立腹。
「ルーファス!! もっと丁重に運んでよ!!(……ったく、何が起きてるのよ?)」