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秋月あきら(秋月瑛)
秋月あきら(秋月瑛)
novelistID. 2039
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大魔王ハルカ(旧)

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第2部_第1話_私は黒猫


 ここは病院。病院と言っても仮設病院。大魔王ハルカが大暴れしてせいで、ちゃんとした病院はパンク状態。そして、ルーファスはとある仮設病院に担ぎ込まれていた。
 ベッドの上ですやすや眠るルーファスに何者かが忍び寄る。まさに音も立てずに忍び寄る。忍者か暗殺者か?
「……ルーファス……起きろ……」
 謎の人物が声をかけるが、ルーファスはすやすやと眠っている。が、
「うっ!(痛い)」
 腹を殴られた。受身全く無しのクリティカルヒットだ。
 目を開けるとそこにいたのは、音を立てずに忍び寄る達人カーシャだった。
「あっ、カーシャ、おはよ(殴って起こすの止めて欲しいんだけど)」
「こんばんわ、元気そうだな」
 と言われルーファスは辺りを見回した。
「……ここは?」
「病院だ。では、行くぞ」
「えっ!?(行くってどこに?)」
 カーシャはいつでも思いつき&唐突で生きる女だった。それが彼女の生きる道!
「ハルカのところに決まっているだろう」
 起きたばっかりで、ぼーっとしていたルーファスは、今の言葉を聞いて目を大きく開けてベッドからバシッとビシッと飛び起きた。
「ハ、ハルカ!? そうだよハルカはどうなったんだ?」
「おまえがぶっ倒れたあと、いろいろあってな(あ〜んなことや、こ〜んなことが……ふふ)、私の?チカラ?を使って大魔王は倒した」
「チカラを使ったの? でも、どうして、なんで生きてたの? あのチカラを使ったらカーシャの身体が持たないんじゃ?」
「……冬だからな……ふふ(形勢逆転)」
 と言って不適な笑みを浮かべるとそれ以上カーシャは何も語らなかった。
「冬だから?(意味がわからない)」
「それよりもルーファス、ハルカが待っている帰るぞ」
「ハルカが待ってるって……だって、大魔王はカーシャに倒されて……ハルカは生きているの?」
「微妙だ(あれを生きていると言っていいのか?)」
「微妙ってっどういうことだよ!」
「会えばわかる(ハンカチの用意だ……ふふ)」

 魔導士たちのチカラによって3日という驚異的な早さで、大魔王によって壊された住宅はすでにそのほとんどが再建されつつあった。
 ルーファスは再建された家々を見てびっくり仰天している。
「もうこんなに元通りになってるなんて……私はどれくらい寝ていたの?(まさか1年なんてことないよね)」
「3日だ」
「ホントに!?(3日でこんなに……アステア王国って建築技術もすごいんだ)」
「だが、中身はからっぽだ。家具などは、数日後に損害を受けた人に支給されるお金でどうにかしろと言っていたな(なんでも金で解決なんて、汚い世の中になったもんだ……私も金貰えるのか? ふふ……楽しみ)」
 汚いと言いつつ、お金を貰えることを楽しみにしているカーシャ。どうやらカーシャはお金が好きらしい。
 自宅は建っている場所は同じだったが、概観は全く別の建物になっていた。ようするに新築だったりする。アステア王国太っ腹!
 ルーファスが自宅のドアを開けると、すぐさま誰かが飛び出して来て二人を迎えた。
「おかえりルーファス!!」
 飛び出して来た何かを見たルーファスは、それを指差し、首だけを動かしてカーシャの方を振り向くと、無表情のまま聞いた。
「何あれ?」
「ハルカだ」
「それは見ればわかるけど……(半透明じゃん、もしかして幽霊)」
 そう、ルーファスを出迎えたのは確かにハルカだった。でも一つだけいつもと違うところがあった。半透明なのだ。
「ルーファス、まあ座れ、説明してやる」
「座れってどこに?」
 家の中には家具一つなかった。
「床にだ。ハルカもこっちに来い」
「は〜い」
 ハルカはカーシャに言われるままに飛んで来た。本当にふあふあ飛んで来た。それを見たルーファスは得体の知れ無い物を見る表情だった。
「だから何あれ?(幽霊にしか見えないけど)」
「床に座れ、わかりやすく説明してやる」
 この後、ハルカについての話を紙芝居や人形劇を交えたり交えなかったりしながら、2時間ほどでカーシャさんが説明してくれた。カーシャさん曰く、大魔王の肉体が滅びたあと、ハルカは自由の身になったのだけど、身体が滅びてしまっていたのでマナだけの状態になってしまったらしい。つまり、わかりやすく言うと幽霊の親戚のようなものにハルカはなってしまったらしい。
「質問はあるか?」 
 ハルカが元気よく手を上げた。
「は〜い!」
「なんだ?」
「私はこれからどうしたらいんですか? ぜ〜んぶカーシャさんの責任ですよ。カーシャさんが死者の召喚なんてしなかったら、魔王なんて呼ばなくても済んだわけですし……(もう、家に帰るどころじゃなくなっちゃた)」
「ハルカがルーファスを気絶させたのがいけないのだろ?(……シュッ!! ……ゴン!! ……バタン!!)」
「うっ……(確かにあれは私がいけないんだけど)。でも、ルーファス生きてたじゃないですか!?」
「それはあとで気付いたことだ、死者の召喚をしたのは私の責任ではない!(本当は生きているのを知っていたのだがな……真実は言えない……言えない……ふふ)」
 カーシャは確信犯だった。しかも、重大な秘密を隠してるみたいだ。だが、それを知るものは誰もいない。
 この場で一人会話に付いて行けない者がいた。もちろんルーファスだ。
「あのさ、死者の召喚って何?」
 この言葉を聞いて二人はいきなり口を閉じて沈黙した。ハルカは内心かなり焦っている、カーシャは平常心。
 まったくしゃべろうとしない二人に不信感を抱くルーファスは、こちらも沈黙してハルカをじーっと見つめている。カーシャは口を割らないのでハルカに集中攻撃だ。
「……(お願いだから見つめないで)」
「……(絶対何か隠してる)」
 ハルカは下を向いて視線を反らす。だが、ルーファスの無言の圧力は続く。で、ハルカはあっさり負けた。
「……ごめん、ルーファス本当にごめんね。だって、だってね、死んじゃったと思って、それで生き返らせようと思って(不可抗力だよねぇ〜)。えへっ」
ハルカは笑顔を浮かべてみたが、口元は明らかに引きつっていた。
「……生き返らせようと思ってねぇ〜」
 そう呟くと、ルーファスはカーシャを疑いの眼差しで見た。
「……(なぜ、私を見る)」
 心の中で動揺がダッシュしているカーシャだが、表情はいつも通り無表情で何を考えているのかわからない。だが、ルーファスにはカーシャが動揺しているのがわかった。二人の仲は長いので、テレパシーみたいな感じでルーファスはカーシャの動揺を見抜いたのだ。
「カーシャさあ……私が生きてること知ってたような気がするのは、気のせいだよね?」
「…………(へっぽこのクセして、鋭い)。私もルーファスが本当に死んだと思ってな。ハルカがおまえに本をぶつけて、殺したと思って土に埋めようとしたのを私が止めなければどうなっていたことか……それで、生き返らせようと……(だが、あんな騒ぎになるとはな……笑えない……ふふ)」
 ルーファスの目がハルカに再び向けられた。
「ふ〜ん、土に埋めようとねぇ〜」
 このときばかりはハルカも言い訳はできない。しかも、ここでカーシャの一言が、