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秋月あきら(秋月瑛)
秋月あきら(秋月瑛)
novelistID. 2039
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大魔王ハルカ(旧)

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第7話_永久に眠れ……


「どこだここ!?」
それがルーファスの第一声だった。
 そして彼はすぐに身体のあいこちに激痛を感んじた。
「(いたたた、かなり、飛ばされたみたいだけど……)」
 ルーファスは目を見開き辺りをぐるっと見渡すと、そこは……。
「噴水広場か……(どうりで身体が濡れてると思った)」
ルーファスの身体は噴水の池にどっぷり浸かっていてびしょ濡れだ。
 人々の姿も気配も無い……どうやらもう非難した後らしい。
人々の姿も見当たらないが……カーシャの姿もどこにも見当たらない。どうやらカーシャはルーファスとは別の場所に飛ばされてしまったらしい。
「(カーシャは自分でなんとかするだろうから……)」 
 ルーファスが大気のマナを身体に取り入れると、彼の身体だけがそよ風に包まれたように衣服かゆらゆらと揺れ、その力を増幅させてレビテーションを使い空を飛んで再び戦場へとルーファスは独り向かって行った。

 魔導士たちは皆、地面に横になり身動き一つしていない。そんな中ただ一人遠く彼方を見つめていたのは大魔王ハルカその者であった。
 大魔王の視線はある一点に注がれている。遠く空彼方からこちらに向かってくる人影を……。
「あの男か……」
魔王は右手を目線の先に突き出し、魔弾を連続して撃ち放った。
 魔弾は人影に向かって風を切りながら飛んで行く。
「ぎゃあっ!」
魔弾がルーファスの頭ギリギリをかすめ、思わず彼はあられもない奇声を発してしまった。
「(遠くから撃ってくるなんて反則だ!!)」
 ルーファスも負けじと魔王に向かって、魔法を放った。
「メガフレア!!」
ルーファスの手から紅蓮の炎が渦を巻きながら、全てのモノを焼き尽くす勢いで魔王目掛けて飛んで行く。
それを見た魔王の表情が少し変わり、小さくこう呟いた。
「メガフレアか……大神の詩を詠えるとは何者なのだ?」
 紅蓮の炎が『ごうぉ』っと音を立て、渦を巻きながら魔王の身体に当たる刹那、魔王は瞬時に漆黒の翼で自らの身体を包み込んだ。
 魔王の身体が紅蓮の業火に包まれる、……が魔王が翼を勢いを付けて大きく広げると、炎はシュウーという音を立て、煙を上げながら消えてしまった。
 それを見たルーファスは思った。
「(反則だ、絶対勝てないよ)」
などと考えているとルーファスの横から不意に声が、
「こんばんわ」
「わっ!(……カーシャか)」
ルーファスの横には何時の間にかカーシャが飛んでいた。
「いつから居たの?」
「今から」
カーシャはいつでも神出鬼没だったりした。
 魔王の眼前に二人の魔導士が降り立った。
「人間風情がいくら増えようが変わらんがな」
カーシャが鼻で笑う。
「考えが甘いな魔王、だからお前は滅びたのだ」
「カーシャ、そんなこと言っていいの?(ケンカ売ってるの!?)」
カーシャの発言に魔王は怒りをあらわにして翼を大きく動かし突風を起こす。
「私を滅したのは太古の神々であって人間ではない」
「そうか、ならば魔王、私の魔法を受け止めてみるがいい」
カーシャはビシッと魔王を指差し『予告倒すぞ宣言』をした。
「よかろう、私は逃げも隠れもしない、撃ってみよ」
魔王には相当な自信があるのか、それとも人間の放つ魔法など取るに足らないものなのか。確かにあの魔導砲ですら倒すことのできなかった強敵だ、カーシャひとりの力ではどうにも成らない相手だ……だがしかしカーシャには作戦があった。
「ルーファス、魔王は逃げも隠れもしないそうだ(じつに紳士的だ)。そこで作戦だ」
カーシャの顔が不敵な笑みを浮かべた。続いてルーファスは不安の笑みを浮かべた。
「作戦って?(カーシャの作戦はろくな事が無い)」
確かにカーシャの作戦及び思いつきの被害者は数知れない。もうすぐ『被害の会』ができるという噂さえある。
 「名づけて、『反則魔法氷炎爆華散[ハンソクマホウヒョウエンバッカサン]』で魔王なんて恐くない作戦……ルーファス、メガフレアだ!!」
「OK!」
ルーファスはカーシャの作戦を瞬時に理解したらしく、目を瞑り両手を魔王に向けた。……しかし、メガフレアは先ほど魔王によって防がれてしまっている筈では……?
「メガフレア!!」
「ホワイトブレス!!」
ルーファスが魔法を放つと同時にカーシャも続けざまに魔法を放った。がしかし、メガフレアは炎系の高位魔法であり、ホワイトブレスは氷系の高位魔法であり、互いは相反する魔法で相殺してしまうのが普通の筈なのだが……。
 魔王の顔が驚愕の色へと見る見るうちに変化していく。
「太古の神々でさえ成しえなかった魔法を人間が何故?」
 二人の放った魔法は互いに轟音と共にとぐろを巻きながら魔王に襲い掛かる。それを見たカーシャが不適な笑みを浮かべた。
 魔王は魔法でシールドを張ったものの二人の放った、(カーシャちゃんネーミング)氷炎爆華散に当たった刹那シールドはガラスの割れるような音を立てて粉々に砕け、炎と氷が魔王の身体を包み込んだ。
「人間は神々の失敗作ではないらしい」
魔王は膝を付き、そのまま地面に平伏した。それを見たカーシャの瞳は氷のように冷たい。
「所詮は過去の亡霊だ」
この時言葉を発したカーシャはいつになくシリアスモードで、ちょっとカッコよかった。だがすぐにカーシャの表情は驚愕の色に変わり、ルーファスも開いた口が閉まらなくなった。
「神々が守ろうとした人間は……今や神も恐れる存在になりつつあるな」
ゆっくりと立ち上がった魔王の身体はボロボロに傷つき、漆黒の翼の片方は身体から離れ地面に落ちている。しかし、魔王の表情からは余裕と自信が感じられる。
「マスタードラゴンですら、一発で消滅させた合体魔法が破れるなんて……(もう笑うしかないわ……ふふ)」
「マスタードラゴンを……私に重症を負わしたことはある……だが堕ちた神であるマスタードラゴンごときと私を一緒にしてもらっては困る」
 魔王が全身に力を込めるとすぐさま身体の傷が癒え新たな翼が生え現われた。
 カーシャは思った。
「(反則だ、絶対勝てない)」
そう、今の二人には勝てる見込みは無いと言える。
 魔王がさらに力を込めると、魔王の肉体が徐々に変化し始めた。手足が伸び、異型な顔つきに飛び出した牙と二本のツノ。
 ルーファスのアゴががぼーんと外れた。
「(変身し過ぎだ、ドラ○エのラスボスか!?)」
カーシャの顔が引きつる。
「(グロイな……ハルカの見る影も無い)」
 魔王は大口を開け鋭い牙を見せながら笑った。
「グハハ、これが俺の真の姿だ」
声の質も変わっている。なんていうか下卑ている。そして口も臭そうだ(ややウケ)。
 すでにこの時カーシャはとても遠い目をしていた。
「(見た目と共に品性までも落ちたか……ふふ、青い鳥が見える)」
 魔王は姿、人格ともにまるで別人に変身を遂げ、その力も……。
 魔王の腕が大きく横に振られ、ルーファスの身体をかすめただけだというのにルーファスの身体は5m後方まで吹き飛ばされた。
「(当たってたら、全身打撲だ、笑えない)」
「(品性は無いが……強いな)」
カーシャの言葉どおり大魔王ハルカの力はハンパなく、すっげぇと言える。
「ククク、人間など全て消し去ってくれる」