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秋月あきら(秋月瑛)
秋月あきら(秋月瑛)
novelistID. 2039
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大魔王ハルカ(旧)

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 へっぽこ魔導士の名をこの国で知らない者はいないだろう。それと、エルザとルーファスは古くからの知り合いであった。それに加えて以前カーシャはルーファスとエルザが通っていた魔導学院の教師であった。
 エルザは魔王に向けて刃を叩きつける。魔王はつるぎでそれを受け止め、ぶつかり合った剣から火花が散った。その間にルーファスとカーシャは魔王の背後に回って魔法を放った。
「サンダーボール!」(ルーファス)&「ライトクロス!」(カーシャ)
 二つの魔法は魔王に直撃したが、魔王の身体には傷一つ付かず、ただハルカの着ている服がボロボロになっていくだけでもう上半身の服は着ていないも同然だった。それを見たルーファスは、
「(幼児体型だと思ってたけどそうでもなかった)」
 と戦いには関係ないことを考えていた。ルーファスのえっちぃ。
 魔王はエルザの剣を受け止めながら、片手をエルザの腹の位置に持っていき魔弾と呼ばれる魔法の弾のようなものを撃ち放った。それを受けたエルザの身体は後方に10mも飛ばされ、エルザの落ちた地面は大きな砂埃を上げた。
 魔王はつるぎを消すと、腕を横に振るいながら呪文を唱えた。
「ウィンドカッター」
 魔王の振るった手からは緑色に光る三日月状の刃が次々と砂煙を上げながらカーシャに向かって凄いスピードで飛んで行き、カーシャはそれを避けるためにレビテーションで上空に舞い上がったが、刃は方向を突如変えカーシャに尚も襲い掛かる。
 魔王は意識を集中させ、ウィンドカッターを操っている。そのためカーシャがいくら逃げても刃は襲い掛かって来る。
 次から次へと飛んでくる刃に逃げることしかできないカーシャはルーファスに助けを求めた。
「ルーファスなんとかしろ!(こんなに空を飛び回っていたらスカートの中身が丸見えだ)」
 カーシャは刃に当たることより、自分の穿いているスカートの中を人に見られることを気にしているらしい。カッワイイ〜。
 ルーファスは少し考えた。
「(魔法で魔王を攻撃してもシカトされそうだから、刃本体を相殺した方がいいか)」
 そう思った彼は刃に直接魔法を放った。
 ルーファスは横投げの要領で手の平に魔弾を作り出し投げた……が魔弾は見事的から外れた。
「標的が遠すぎる」
 ルーファスはボソッとそう呟いた。
「ちゃんと狙えへっぽこ!」
 そう言われたルーファスは作戦変更、空を飛んで標的の近くまで行くことにしたのだが、空を飛んだまではよかった……が作戦は失敗だった。空を飛んだために魔王の視界に入ることになり、刃がルーファスまでも襲うことになったのだ。それを見たカーシャは本気でこう思った。
「(役立たずのへっぽこ)」
「わ〜助けてぇー誰かー」
 ルーファスは必死で刃を交わしている。役立たずだ。
 上空で刃から必死に逃げるその姿は遠めから見るとまるでうるさいハエ飛び交っているようだった。
 一方魔導砲の準備はというと――魔導士たちが魔導砲に向けてマナを注ぎ込んでいる真っ最中だった。そうここに集まった魔導士たちは目の前で戦いが繰り広げられていたのをただ見ていたわけではない、魔導士たちは自然界にあるマナを自らの身体を通して魔導砲に注ぎ込んでいたのだ。そして、ついに魔導砲を最大出力で打てるまでのマナを注ぎ込み終わった。
「撃てーーーっ!!」
 エルザ元帥の声とともに魔導砲が轟音を立てる。魔王はその音を聴いてはっとした表情を浮かべた。この攻撃はまさに上空を飛びかう目障りなハエに気を取られ過ぎた魔王にとっての誤算が生み出した不意打ちであった。
 魔導砲はもの凄い音と光を放ちながら地面をなぎ払い魔王に向けて進んで行く。次の瞬間、辺りは耳の鼓膜が破れんばかりの衝撃音とともに爆風が巻き起こり世界は白一色になった。
 徐々に世界に色が戻って来る……魔王はどうなったのか?
 魔王はまだ生きていた。魔王は両手を自分の前に突き出しシールドを張り魔導砲を受け止めてはいるものの、魔王の身体は地面を削りながら徐々に後ろに押されている。
 それを見た魔導士たち、そしてエルザ元帥は愕然とした。小島を一つ消滅させてしまうほどの攻撃力を持つ魔導砲がシールドで防がれている。しかし、彼女たちにはそれを見ていることしかできない、すでに自らの身体を媒体として大量のマナを魔導砲に注ぎ込んでしまったため身体に過度の負担をかけ立ったいることすら困難な状況なのだ。
 そうとなればこの場でまだ戦えるのは、あの二人しかいないハズなのだが、二人の姿は何処にも見当たらない……。二人は魔導砲が巻き起こした爆風とともに何処かに飛ばされてしまっていたのだった。
 魔王のシールドがミシミシという音を立てながらヒビが入り始めた。このまま行けばシールドは壊され魔王は魔導砲の直撃をくらうと誰もが思ったとき、魔王の身体に変化が現われた。
 ハルカの背中から突如漆黒の悪魔の翼が生え、肌にはヒビが入り皮がどんどん肉とともに剥がれ落ち地面にボトボトと落ち始めた。脱皮っぽい!?
 魔王の身体が徐々に魔導砲を押しながら前に前進して行く。そしてついには魔王は一気にマナを増幅させて、魔導砲の軌道をずらし空の彼方に弾き飛ばしてしまったと同時にハルカの身体が膨張し肉が全て剥げ落ち、中から別の生き物が姿を現した。脱皮完了!?
 漆黒の引き締まった身体と紅い翼と鋭い手の爪を兼ね備え、燃えるような瞳でエルザたちを睨みつけていた。
 この姿こそが魔王ハルカの真の姿であり、魔王復活の瞬間でもあった……。

 真の復活を遂げた魔王。ハルカはどうなってしまったのか……。そして、あの二人は今どこに……?