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秋月あきら(秋月瑛)
秋月あきら(秋月瑛)
novelistID. 2039
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大魔王ハルカ(旧)

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「ハルカを助けに行くぞ(……私の責任だからな)」
「当たり前だ……ところで魔王は何処にいるんだ?」
「知らん(とりあえず、こっちに歩いてみただけだ)」
「……(適当だ)」
 カーシャは思いつきで生きる女だった。

 倒壊した建物の上で今まさに戦いが繰り広げられていた。
「行けぃ、行け行け行け!どんどんかかれぇーっ!」
 ヴェガ将軍はつるぎを前にかざし、その合図とともに兵士たちは次々と魔王に斬りかかって行った。
 魔王は『ふん』と鼻を鳴らし手を天空にかざすと、その手が電光を放つと同時につるぎが現れ魔王はそのつるぎをガシッと掴んだ。
 そのつるぎは雷をそのままつるぎにしたようなもので、丈が異常に長く普通の人間には使いこなせない魔王ならではの武器と言える。
 つるぎを手にした魔王は襲い掛かって来る兵士たちにその刃を向け、いとも簡単に一掃してしまった。その光景は圧巻だった。力の差がありすぎる。そして、ついにはヴェガ将軍のみとなってしまった。
 魔王は自分の下に転がる死体を踏みつけこう言った。
「人間とは無力なモノだな……私はこんなものの為に」
「魔王がどうした……そんなもの恐るるに足りんは!!」
 ヴェガ将軍は叫び声を上げながら大剣を振りかざし、魔王に突然斬りかかった。
 魔王はヴェガに哀れみの瞳を向けた。
「まだ、私に楯突く気か……?」
 ヴァガの大剣が魔王を捕らえた……しかし、魔王は微動だにせず避けることすらしなかった。
「死ねぇっ魔王!」
 ヴェガの大剣が魔王の肩に食い込んだ。
「(魔王など……!?)」
 ヴァガの顔を見る見るうちに蒼ざめていく。……魔王が……剣で斬られたというのに魔王の口元は不適な笑みを浮かべている。
 衝撃のあまりヴェガは身動き一つできなくなり、魔王に首もとを鷲掴みにしてそのまま放り投げられてしまった。
「ゴボッ……ウグ……(声が……出せん)」
 ヴェガは首を抑え地面に這いつくばっている。それを見た魔王は静かにヴェガに歩み寄り彼のことを冷たい瞳で見下ろした。
「……こんなにももろく弱々しい者を神はなぜ作ったのか?」
 突然魔王は腹に痛みを覚えよろめいた。魔王の腹には鋭い氷の刃が突き刺さっていた。
 魔王は後ろを振り向き目を見開いた。
「お前か……女」
 魔王の目線の先にはカーシャの姿が、
「待たせたな、魔王ハルカ」
 たぶん魔王は待っていなかったと思う。
 ハルカの身体に突き刺さった氷の刃を見て、ルーファスは取り乱した。
「な、なんてことするんだ、身体はハルカのものなんだぞ!」
 そうルーファスの言うとおり、この身体はハルカのものだ。傷つけることは望ましくない。が魔王ハルカが自ら氷の刃を引き抜くと傷は見る見るうちに塞がり跡形もなくなってしまった。
「見ただろルーファス遠慮することはない、どんどん殺れ」
「(やれって言われても)」
 ルーファスは躊躇した。だが魔王には躊躇などなかった。
 魔王はつるぎを横にブン! と振り回した。カーシャはしゃがんでそれを避け、ルーファスはエビ反りで紙一重で避けたが服が少し焼け焦げた。
 ルーファスの頬に冷や汗が流れた。
「(死ぬかと思った)」
 と思ったのも束の間、魔王の次の攻撃が二人を襲う。
 魔王のつるぎがルーファスの頭上に今まさに振り下ろされようとしていた。それを見たルーファスは両手を前に突き出しこう唱えた。
「デュラハンの盾!」
 すると、ルーファスの前に半透明のシールドが現れ、間一髪の所で魔王のつるぎを受け止めた。
 一般に使われる魔法、主にレイラ・アイラに関しては魔法を発動させる際にはその魔法の名を言う必要は基本的にないが、それ以外の魔法、ライラなどに関しては魔法を発動させる際には魔法の名前や詩を口に出す必要がある。
 ルーファスの張ったシールドは明らかに魔王のつるぎに押されている。シールドが破られるのも時間の問題だろう。だがそのときカーシャがルーファスに向かって叫んだ。
「ルーファスその場を離れろ!」
 と少し間を置いてすぐに言葉を続けるカーシャ、
「アイスニードル!!」
 とカーシャが唱えると突然、魔王とルーファスの真上に巨大ないくつもの氷の刃が現れ急落下した。
 地面に降り注ぐ氷の刃は容赦なく二人を襲う、そして魔王の身体を貫いた。ルーファスはシールドを張っていたおかげで助かったがルーファスの顔は明らかに引きつっていた。
 魔王のつるぎに込められた力が少し弱まった隙をつきルーファスはシールドを解き猛ダッシュでその場から逃げると同時に魔王のつるぎが振り下ろされ地面を粉々に砕き横幅1m程の穴を開けた。
 顔を引きつらせたルーファスはカーシャの方を向いてこう怒鳴った。
「巻き添えにして殺すきか!」
「だから、離れろと言っただろうが(それにシールドも張っていたしな、大丈夫だと思ったがな)」
 魔王は地面に突き刺さったつるぎを引き抜くとこう言った。
「二人とも神の詩を詠えるとは驚いた」
 その声は際して驚いているようには聞こえないが、二人に驚いたというのは本当だろう。
 ライラは別名『神の詩』とも呼ばれ、文献などでは残っているのはその術を実際に使える者はそうはいない、先ほどライラを使った二人が一流の魔導士としての技量を兼ね備えている証であると言える。
 魔王の目つきが変わった。その瞬間この場の空気が一瞬にして重くなった。
 ルーファスとカーシャの身動きが止まり、魔王との息をもつかぬ睨み合いが始まった。沈黙が辺りを包み込む。
 カーシャは天に手をかかげたままの体制で止まっている、次の攻撃の準備はいつでもできているというわけだ。一方ルーファスはこんな最中にこんなことを考えていた。
「(先に仕掛けるべきか否か……そうだった……お湯を沸かしたまま家を出てしまった)」
 ルーファス今はそんなことを考えている場合ではないだろ。それに家はすでに全壊しているのでお湯の心配はいらない。
 辺りの沈黙を破ったのは馬のひづめの音だった。
「止まれー!!」
 という女性の声とともに馬に乗って現れたのはエルザ元帥率いる城に残って待機をしていた魔法兵団の残りだった。
 魔王の目線が今運ばれてきた大きな荷物に注がれた。
「(……魔導砲!? ……人間がこのような兵器を持っていようとは)」
 魔導砲は普通の大砲の3倍近くの大きさがあり、その表面には魔導文字がびっしりと刻まれている。
 エルザは馬から飛び降りると魔導士たちにこう指示をした。
「魔王は私が少しの間引き付ける(魔王……見た目はたたの少女ではないか)、その間に魔導砲の準備をしろ!!」
 その言葉を聞いた魔王は鼻で笑いこう言った。
「私を引き付けるか……面白い」
 魔王はつるぎを構え直し、エルザを迎え撃つ体制を整えた。
 エルザは地面を強く蹴り上げ魔王に向かって走り出した。そして、走りながら魔法で作り出した光り輝くライトソードと呼ばれるつるぎを出し魔王の近くにいた二人を見てこう言った。
「ルーファスとカーシャ先生、戦意がまだあるのならば援護を頼む!」