えすぱーと一般people!
その声に振り返る波原さんの首筋にそいつは短冊みたいな紙を張った。
「ガアァァァァァ!!」
人のものとは思えないような叫び声をあげながら体を仰け反らす波原さん。
「ごっごほっ、ごほっ」
やっと解放されてそのまま地面に手を付いてせき込む譜都。
息も絶え絶えにさっきの声の主を見上げる。
そこにいたのは見慣れた奴だった。
「な、なんでお前、石井……」
「お前がこんなんにほいほいついて行くからや」
顎で波原さんの方をしゃくる石井。
波原さんは苦しみながらも、さっき石井が張った紙を剥がそうと首筋を引っ掻いたりしている。
しかし紙はぴったりと貼り付いていて、剥がれそうにも、破けそうにもなかった。
「無駄や、お前が出てこん限りそいつは剥がれへん。そういう札やからな」
石井がそう言うと、がくりと操り人形の糸が切れたように動きが止まった波原さんの背中から
陽炎のようなものが立ち上がり始めた。そしてそれは段々と形を形成していく。
「う、うわぁぁ!」
ことりと地面に倒れた波原さんの隣に現われたのは狐だった。
しかし、その体は2メートルを超える大きさで、口は裂け、目は異様に釣り上がり、尾は2つあるという異様な姿だった。
その狐の前に跪く石井。
「どうか稲荷様、お怒りを鎮めてください」
「おぬしらの魂を喰わせたもうぞ。すれば考えてやらぬこともなかろうて」
ニタニタ笑いながら血生臭い息を吐く狐。
「喰おうぞ喰おうぞ人のタマ。さすれば尾が割れるや。ケケッ!」
「そりゃ、残念や。最近の妖孤は引き際も測れない奴がいるみたいやな。せっかくこっちが下手に出てるのも
解らんみたいだし」
「ガァァァ!」
石井の言葉が最後まで終わらぬ内に跳びかかっていく妖孤。
「もう終わってるんや。あんさんは」
石田の寸前まで迫った妖孤の足もとが不意に明るくなった。
そこの地面に刻まれているのは光り輝く五芒星だった。
「グアァァァ!」
光の中で苦しむ妖孤。
その光の眩しさに譜都が目を伏せて数秒、光が消え、瞼を開けると、そこにはもう妖孤は居なかった。
「アホらし。なんでお前みたいな雑魚が九尾なる抜かしとんねん」
「お、おいアイツどこに……」
倒れてる波原さんの隣にへたっていた譜都がやっとの思いで言葉を口にした。
作品名:えすぱーと一般people! 作家名:yoshi