えすぱーと一般people!
「つまり、物音とかが聞こえ始めたのが2週間前ほどからなんですね。」
放課後、さっそく仕事をすべく、悩める少女波原さんと一緒に現場、つまり波原邸に向かう譜都。
夕暮れも暮れかけ、辺りもだいぶ薄暗くなってきた道をゆっくり歩いていく。
一緒に帰るというのは、譜都の常用手段で、相手の気持ちをなるべくリラックスさせるということと、
依頼主の状況、精神状態を把握するという意図があった。
実際はただの世間話をすればいいだけのことなのだが。
「好きな色ってありますか。」
「色、ですか?」
「そう、色。色には霊的意味もあって、時にはあやかしから、守護してくれることもあるんですよ。」
「じゃあ、黄色で」
「わかった黄色ね」
そういうと譜都はバックから黄色い折り紙を取り出して慣れた手つきで折り始めた。
「わぁ」
しばらくして完成した折鶴を波原さんに手渡す。
「この折り紙があなたを守護してくれますよ。」
もちろん、相手を安心させるためのパフォーマンスのひとつだ。
それをうれしそうに受け取る波原さん。
「ありがとう。大切にしますね」
素直に女子に礼を言われると、健全なる男子高校生は少なからず嬉しいはずなのだが、譜都はむしろ客観的に
彼女の心理状況を分析していた。
仕事に私情は持ち込まない。それは仕事としての合理的な判断を鈍らす要因にしかならない。
それが譜都のポリシーだった。それ以前に、仕事が終われば殆ど接点が無くなる相手なんかにいちいちかまってられないのである。
それからしばらく雑談などをして、彼女が置かれている状況を大体把握できた。
しかし別段、彼女に疑心暗鬼を起こすようなストレスや、トラウマは読み取れなかった。
こういう場合は十中八九が外的要因によるもの、つまり屋根裏にねずみなんかが駆けずり回ってることが原因になる。
そうすると、あまり報酬は期待できないことになってしまった。
譜都はさっきより幾分気の抜けたような気持ちで街頭に照らされた道を歩く。
会話も分析する必要が無くなったので、つれづれなるままに適当なことを話し出すことにした。
「じゃあ、波原さんの好きなものって何ですか?」
傍から見ると付き合ってるみたいに見えんのかなと考えながら質問する。
「もちろん、油揚げですよ」
「え、油揚げですか?」
作品名:えすぱーと一般people! 作家名:yoshi