かえるの写真
翌日、通りすがりにソレを目撃した別の同僚が、動揺のあまり柱に頭をぶつけたと聞いた。私は憮然としたが、なぜだか彼女は腹を抱えて笑った。
「……そんなに面白いですか」
「面白いですよー。だって高屋さんが笑ったくらいで頭ぶつけるとか、あははは」
そんなに珍しくもないのにね、と目尻に涙さえ浮かべて笑い転げる彼女の言葉に、私は一瞬言葉に詰まる。
「珍しく、ないですか」
「ないですよ」
「……そう、ですか?」
あまり自覚がない。自分自身は気付いていないのに、彼女は気付いている事があるというのが私を奇妙な気分にさせた。
思わず自分の頬や口元に手をやれば、彼女はまた笑う。
「あんまり回数は多くないですけど、最近は珍しくないですよ。カエルの話の時もちょっと笑ってましたし」
「そうなんですか」
「そうなんですよ……ってうわ、ちょっと、なんでこっちの頬つまむんですか!?」
鸚鵡返しに言って笑う彼女の頬を無遠慮につまんで、軽くひっぱると思ったよりも柔らかかった。
「案外柔らかいですね。あなたはよく笑う方だから、もっと筋肉が発達しているかと思いました」
「いや、触って硬く感じるほど表情筋が発達してたら逆に怖いじゃないすかー!」
「そうですか?」
「ですよ! あ、ほら、また笑ってる!」
「はい。今のは自分でも気付きました」
珍しくムキになって言い募るあなたが面白くて。
そう告げると彼女は急に大人しくなって、うう、と恨めしげに唸った。