かえるの写真
それから少しずつ少しずつ、私はパートナーを自分の中に受け入れはじめた。
最初は耳障りだった雨音がいつしか耳に馴染み、やがて穏やかな眠りを誘うように、彼女の存在は私の中に溶け込んでいった。彼女も私が少し打ち解けたことを感じ取ったのか、前よりも口数が増えた。仕事の合間に雑談をするようにもなった。
「そういえば高屋さん、この間アパートの入り口でアマガエルを見たんですよ、アマガエル」
「カエル? お好きなんですか」
相手が何を好むかなど気にした事もなかったのに、自然とそんな言葉が口をついて出る。彼女が些細な私の変化に一々気づいて、柔らかく目を細めている事にも気付いた。
誰に対してもそうだが、他者の素直な反応や好意的な受け答えを得る度、彼女は嬉しそうにする。
「今までは別にどうとも。でも、久し振りに見たら記憶よりずっとちっちゃくて可愛く見えちゃって。すぐ逃げられたんですけど、写真撮っておけばよかったなー」
「アマガエルの写真を、ですか」
「ですよ。そうしたら高屋さんにも見せられたのに」
可愛かったんですよ、と繰り返す彼女が楽しそうなので、私もつられて小さく笑った。