王立図書館蔵書
そわそわと落ち着かない様子で辺りを見回し、衛兵はお辞儀も忘れて走り去って行った。もちろん玉蘭も衛兵の小さな無礼などまるで気にとめなかったのでどうでもいいことである。
手紙とおぼ思しき物体は小さく折りたたまれていて、玉蘭の小さな手のひらに簡単に収まるくらいの大きさだったが、そのままの状態でもかなり分厚いものであることはわかる。
開いてみるとやはりそれは手紙だった。しかも普通の手紙よりずっとたくさん量のある手紙だ。自分にこんなにたくさんの文字がある難しそうな手紙が読めるかしらと不安になったが、心配は不要だった。ほとんど玉蘭がぎりぎり読める文字しか使われていなかったから。それでも自信のない文字は、勉強の時間に使っている言葉の教科書で調べることにした。
その手紙の書き出しはこうだった。
『玉蘭がこれを読むころには、わたしはもう空の星のひとつとなっていることだろう。
今、わたしは城から少し離れたところにある小さな村の宿屋でこれを書いている。きっと明日の昼には城につくことができるはずだ。
わたしがこの手紙を書いているのは、こんなことを伝えたいためではない。君にどうしても伝えておきたい真実があったからだ。
君はひょっとしたらこのことでわたしを、またはそれ以外の誰かを恨んでいるかもしれないね。すべてを愛しすべてを憎まない人などこの世に誰一人と存在しないのはわかっている。でも、憎しみの心を抱くとしても、その前に知っておいてほしい真実があるんだ。
わたしは今からそれを語ろうと思う。・・・・・・・・・・・・』
玉蘭はベッドに戻らず、勉強用の椅子に座った。
これはベッドに転がって読んでいいようなものではないと思ったから。
いったん机に手紙を置いて、深く深呼吸をして落ち着いてから、玉蘭は手紙の続きを読み始めた。