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VARIANTAS ACT1 初戦

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 次の瞬間、コックピット内に表示される落下軌道の情報通り、敵の戦闘母艦が、全長数百mはあろうかと言うその巨体を真っ赤にさせながら降下してきた。
 艦体は、迎撃仕切れなかった防空ミサイルの直撃で、であちこちが千切れているが、未だに活動を停止しない。
 ヴァリアントを破壊する方法は二つ有る。
 一つは、動力である反物質反応炉と制御中枢を兼ねたコアを撃ち抜く事。再生能力を持ったヴァリアントは、多少の損傷などみるみる再生してしまう。だが、コアがほんの数パーセントだけでも損傷を受けると、たちまち活動を停止してしまう。
 そしてもう一つは、ヴァリアントの再生能力を超える損傷を与え、身体維持能力を奪うこと。
 前者は困難だが確実であり、後者は簡単だが不確実だ。
 しかも艦体種は、質量が数十万トンにも上る大型種。破壊には数発の指向性熱核弾頭が必要になる。
 しかしディカイオスは、それをやってのける。 
「12時方向から高エネルギー反応」
 敵の艦首が煌めき、巨大なエネルギーの奔流が機体を掠める。
 敵艦の主砲、5000㎜陽電子砲だ。
 敵は再生より、攻撃にエネルギーを注いでいる。
「エステル!」
 彼の声に応え、エステルが機体腰部に装備された亜空間コンテナの中から、一つの武器を取り出して装備する。
 プレッシャーカノン。極度に歪曲した重力波フィールドを射出する射撃兵器だ。
「敵艦、全砲門を解放」
 敵艦は全身の対空砲を撃ちながら、艦首陽電子砲を再びチャージ。
 それに対し彼は、対空砲の弾幕を回避しながら、敵をロックオン。
 敵艦がミサイルを発射。数60。
「敵、ミサイル発射」
 彼は冷静に武装を選択。次の瞬間、ディカイオスの両膝ブレードアーマーが展開し、無数のレーザーが照射された。
 レーザーは全て自動で誘導されながら、次々に敵ミサイルを貫いてゆく。AHL――アクティブホーミングレーザーだ。
 ミサイルを迎撃し、プレッシャーカノンの射線を敵艦に重ね、トリガー。
 射出された重力波フィールドは、敵の左舷をまるごと削り取るが、敵は構わず陽電子砲を発射。
 同じ射軸上で発射された陽電子砲はディカイオスを直撃。
 ディカイオスは、左腕から展開した重力波フィールドで陽電子砲を防御するが、突撃してきた敵艦の艦首がディカイオスの胸部に衝突。敵艦は推進機関を最大出力で噴射し、ディカイオスを押しながら前進を続ける。
 その時エステルが、敵艦の異変に気づく。
「敵艦構成物質、励起。自爆するつもりです」
 敵艦は最後の力を振り絞り、自分を構成する物質を次々に励起爆薬へ作り変えていた。
 敵艦の質量は数十万トン。その三割が爆薬化するとしても、その破壊力は空前絶後の爆発力だ。
 もしこんなものがここで爆発すれば……。結果は火を見るよりも明らかだ。
 ――やらせはしない。
 グラムが、心の中でそうつぶやく。
 次の瞬間、ディカイオスの右膝蹴りが敵艦艦首にヒットしブレードアーマーが深々と突き刺さる。
 そして彼は、突き刺したブレードアーマーから、ホーミングレーザーを零距離で発射。
 内部から貫かれ堪らず推進軸をずらそうとする敵艦の艦首を蹴り飛ばし、背後へ回る。
「エステル! プレッシャーカノン、出力最大!」
 彼はそう言ってプレッシャーカノンを構え、腰部側面重力アンカーユニット“オルトロス”を射出。アンカーを空間に打ち込み、自身を空中に固着する。
 遠ざかって行く敵艦。
 刹那、プレッシャーカノンのトリガーが引かれた。
 プレッシャーカノンの砲口から、極太の歪曲重力波フィールドが撃ち出される。
 プレッシャーカノンは、極度に圧縮した重力波フィールドによって強制的に歪曲させた空間の復元力をコヒーレント化し指向性を与えて打ち出す際に発生する衝撃波によって目標を破壊する超兵器だ。
 この衝撃波は空間そのものの振動が伝播するものである為、物理的な距離を進行することでそのエネルギーが減衰することはない。その為空間歪曲に反発して発生する空間の自己復元力のエネルギーの実質上粗全てを目標に叩きつける事が出来るのである。
 そして、目標は自身の存在する空間ごと振動し、基礎構造から破壊されることになる。
 事実、敵艦はトリガーと同時に、完全に粉砕され、その存在をこの世界から消されていた。




***************





 目の前で爆炎が散り、一瞬意識が飛んだ。
 目が覚める。
 生きている。
 ミサイルはアクティブ防御機能で撃ち落とされたらしい。
 直撃を免れたとはいえ、敵の発するミサイルもその弾頭は金属励起爆薬。メタニウム装甲とh2の強固なフレーム強度がなければ、戦闘不能になっていた所だ。
「サラ……、スタイナーはどこだ?」
 サラがレイズに答える。
「504号機、反応無し」
 その瞬間、レイズの瞳孔が一気に開いた。
 起き上がった自機の足元には、スタイナー機の持っていた軽機関砲が。そして周囲には、HMAの残骸が転がっていた。
 辛うじて残った装甲板の切れ端。そこには504の数字。
「ああぁ……スタイナー……そんな……そんな……」
 ――店をやる。
 ――みんなを笑顔にする。
 よみがえる、彼の……、スタイナーの言葉。そして……笑顔。
「うわあぁぁぁあぁ!!」
 次の瞬間彼は、スタイナー機の持っていた重機関砲を持ち、スラスターを思い切り噴かしていた。
「おい、待て! やめろ!」
 小隊長の制止を無視して、単機、ヴァリアントの群れに突撃して行くレイズ。
 機体を掠めるビーム。
 昇華する地面。
 無視。無視。無視。
 今は何も感じない。
 今はただ奴らを……
 ――殺してやる!
「敵機、左40、4機。右30、3機接近」
「うおあああぁぁ!」
 右手にアサルトライフルを持ち、左手に機関砲を持つ彼は敵機をロックし、トリガー。
 彼の咆哮と共に、両手の重火器が火を噴き、メタニウム弾が連射される。
 爆ぜる敵機。
 彼の周囲の空気と、モニターを焦がす爆炎。
 ダウンカウントしていく弾数表示。
 足元に転がる、無数の空薬莢。
 複数の敵機を単機で相手をしているせいだ。火器の弾薬はすぐに底をついた。
「ライフル、機関砲、残弾0」
 彼は弾切れになった火器を即座に手放し、一機のソルジャーに飛び掛る。
 ソルジャーはビームカノンを発砲。レイズは至近距離で放たれるビームカノンを回避するが、ビームは左肩を貫通。かまわず、ソルジャーの首を掴むと、両腕部にマウントされた100㎜単装機関砲を撃ちつづける。
 ――殺してやる!
 ――殺してやる!
 呪詛のように繰り返す彼の機体の後ろには、陸軍航空騎兵隊の重武装機、HMA-h2C/B・ストライクウルフが迫っていた。
 しかしレイズは、それさえも無視して撃ちつづける。
 腕部機関砲残弾ゼロ。彼は撃ち抜いたソルジャーを捨て、弾切れになった機関砲をパージ。腰からソニックブレードを抜いて握り締める。
「うおおおおおおお!」
 彼は近くの敵へ真っ直ぐにブレードを振り下ろした。
 腕を交差させ、ブレードを受け止めるソルジャー。
 火花を散らしながら、ソルジャーの腕に食い込んでいく超振動ブレード。