小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

VARIANTAS ACT1 初戦

INDEX|5ページ/9ページ|

次のページ前のページ
 

Captur 2



戦場に行く。
そんな事は、軍に入った時から覚悟していた。
人類の為に戦う。
なんて名誉な事なんだろう!
でも、現実は違っていた。
一体何が起きるのか。
何をすればいいのか。
あまりにも突然で、理解する時間は与えられなくて……
 つい二日前までは本部で訓練をしていた筈なのに、今は16000キロも離れた前線基地にいる。


「星なんて久し振りに見るな……」
二人は、派兵された北米大陸北部の陸軍基地宿舎屋上で空を見上げていた。
雲一つ無い星空。空気はガラスのように透き通り、月は真ん丸で、美女の横顔がよく見えた。
「なぁ、スタイナー。この戦争が終わったら、お前何をする?」
「俺か? 俺は軍を辞めて彼女と店をやる。上手い飯で、みんなを笑顔にする」
レイズが微笑んだ。
「なんかお前らしくないな」
「ちょっとクサかったか……。お前は?」
「僕は決めてないよ……。将来の事なんて…決められない。なあ、スタイナー。お前は怖くないか?」
「怖いさ。でも、戦わずに殺される方がもっと怖い。それにこっちには、ミラーズ大佐がついてる」
「ああ。 大佐みたいに戦えたら、どんなに良いものだろうな……」
レイズがそう言った瞬間、空の彼方に幾つもの閃光が煌めいた。ヴァリアントの船団が、第二核機雷原に突入したのだ。
 確実に近付いている危機。彼等も、40時間後にはここビヤビセンシオ陸軍基地から落着予測地域へ出発する。




***************




[10月16日1800時、サンヘドリン本部中央指令室 船団落着まで60時間]
「船団、第二核機雷原に突入。起爆数70」
「第七防宙連隊より入電。敵巡洋艦三隻の撃沈を確認」
 メインモニターに、防宙部隊の撮影した映像が映し出された。
 そこに写っていたのは、艦腹から真っ二つに折れた敵巡洋艦の姿。
 それを確認したガルスが、オペレーターに問う。
「敵船団は?」
「機雷原を抜け、月軌道へ侵入。48時間後、地球軌道艦隊と接触します」
ガルスは髭をさすり大きく深呼吸。
 その時、デスクの上に、さっ……と、ソーサーに乗ったコーヒーカップが差し出された。
 ガルスの少ない愉しみであるブラックコーヒー。それを知っているのはただ一人だけ。
「司令、コーヒーをお持ちしました」
 彼の横に立つ女性、司令官補佐のレイラだ。
「有り難い……」
 少し落ち着いた表情を見せるガルス。
 彼はコーヒーを一口。
「久々の休暇だったのに。急に呼び出して悪いことをしたな、レイラ君」
「いえ……。私は司令の秘書ですから。これも仕事です」
 そう言って優しく微笑む彼女に、ガルスは吐き出すように呟く。
「戦略行動を見せないカミカゼ的行動。突撃と突破の繰り返し。その目的は……」
「ここ、ですか?」
「奴らもここの防空システムとディカイオスを容易に抜けることなど出来ないとわかっているはずだ」
「防空システムに対する……強行偵察!?」
 目標の落着予測地点、南米防空司令部は、南米大陸北部の地下8000mに建設された軍用ジオフロントだ。
 ジオフロントは岩盤その物を装甲としている――サンヘドリン本部と同様である――が、大質量高速移動体の衝突には、当然非力だ。もし落着を許せば、司令部は周囲の岩盤ごと蒸発することになる。
「防空司令部への落着は、いきかけの駄賃。防空圏を抜ければ、奴らは自爆も厭わぬだろうな」
「質量数十万トン分の金属励起爆薬……。考えたくありませんわ」
「抜けられれば……だがな」
 ガルスはそう言って、不敵に微笑んだ。

 48時間後の10月18日2000時、地球第四軌道艦隊が船団と会敵。
 同2011時、船団より砲艦が先行。戦闘母艦が単独で大気圏突入シークエンスを開始。
 同2018時、砲艦二隻が艦隊へ主砲を発砲。被弾艦3、小破1、中破2。
 同2019時、艦隊応射開始。効力射多数。
 同2022時、砲艦二隻が軌道艦隊中央で自爆。大破4、中破多数。
 同2030時、敵戦闘母艦、大気圏突入コースへ進入。阻止限界点を突破。
 予想落着時刻まで、あと16時間。