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VARIANTAS ACT1 初戦

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 構成質量の大半を失った敵砲艦は自身を構成するナノマシンの制御を失い死滅。黒曜石のように結晶化し、自らの運動モーメントにより粉々に砕け散った。
 だが、生き残った船団は、その間に艦隊を大きく引き離していく。
 モニターに映る船団。それは、先程とは逆の赤方偏移によって赤みを帯びていた。
「追撃しますか?」
 コイズミの問いにクロサキは溜息混じりで答える。
「いや、今の我々に追撃は不可能だ。後は地球の彼等に任せよう……」
 クロサキはそう言って、艦隊の戦闘態勢を解除した。


***************


[同日10月14日0530時、オーストラリア大陸サンヘドリン本部]
 追い越し車線に進路を変え、前の車を追い抜きながら小型の通信イヤホンを耳に付け、スイッチを叩く。通信開始。
「状況を」
「コードレッド、全軍に対してデフコン1」
「何があった」
「1時間前、オリュンポス山天文台のPan‐STARRSが艦影を捕らえました。一個空母戦闘団です。敵空母戦闘団は火星方面軍第三機動艦隊を抜け、既に火星スイングバイ軌道への進入を開始」
「情報軍団からの回答は?」
「地球到達まで約120時間。地上への予想落着軌道は南アメリカ大陸北部、南米防空司令部」
 報告を聞き終え、グラムはアクセルペダルを更に踏み込んだ。
 車は主幹道路を離れ、地下へのトンネルへ入ってゆく。
 行き先はエアーズロック直下地下2000mジオフロント。
 天然の岩盤を巨大な装甲としたこの施設こそ、サンヘドリン対ヴァリアンタス軍本部だ。


***************


[同日、本部訓練所食堂]
「しっかし、食堂のカレーはまずいな」
 スタイナーのぼやきに、レイズが応えた。
「なら他のにすればいいじゃないか」
「これが一番マシなの!」
 二人の声に、食堂コックが咆える。
「聞こえてんぞ!」
 肩をすぼめる二人。
「彼女の料理に比べたらこんなの豚の餌だぜ、全く……」
「そんなにうまいのか?」
「なんたって、シティで店出してるからな」
「あー、納得」
 うまくもないカレーをかき込み、立ち上がろうとしたその時、食堂に一人の男があわてた様子で入ってきた。
「おいみんな! 飯食ってる場合じゃないぞ!」
 男は切れた息を整えて、大声で言う。
「ヴァリアントが来る! 俺達にも出撃命令が出たんだよ!」


***************


[サンヘドリン中央指令室、0600時]
「目標船団、火星スイングバイ軌道を離脱。最終加速に入りました」
 オペレーターの報告を聞きながら、その将官は鋭い眼光でモニターを凝視していた。
 将官は、特務機関サンヘドリンの機関長ケスティウス=ガルス中将。サンヘドリン対ヴァリアンタス軍総司令官その人だ。
「目標の速力は?」
「目標は現在、N338宙域を重力波ベクトル推進で全速航行中。30時間後第一核機雷原に、60時間後には第二核機雷原に突入します」
ガルスは髭を撫でながら、オペレーターに言う。
「核機雷をNフィールドに集中。縦深配置」
「了解」
「ミラーズは?」
「ただ今本部に到着」
オペレーターの言葉を聞いたガルスは、吐き出すように大きくため息をついた。