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Gothic Clover #05

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 しかし、最近になってやっとわかった。恵之岸の父親は実は殺人組合「恵之岸歌劇団」の団長で、恵之岸を殺したのは「恵之岸歌劇団」に対向する殺人集団「人喰倶楽部」の創始者、人杭 消太(ひとくい しょうた)だということだ。

 思えばあれからだ。ボクの周りに殺人事件が多くなったのは。
 小6の頃には通り魔が出て、当時ボクのクラスの担任だった噛神 愛太(かみがみ まなた)が死んだし、中2の頃には先輩の恐神 貞子(きょうがみ さだこ)が首を斬られて死に、中3の頃には同級生の刺鋼 針(さしがね しん)が、殺された後に内臓を抜かれ、包帯を巻かれてミイラにされた後に森林に放り込まれ、そして同じ年の冬に倒鐘 罰浩はバラバラにされて殺された。
 ちなみに小6の頃の通り魔の正体は校長だったし、中2の頃の首切り事件の犯人は同級生、中3のミイラ事件の犯人はその被害者の姉だった。
 しかし、罰浩を殺した犯人はまだわかっていない。
 これらを見ると、世界は狂っているんじゃないかと本気で思ってしまう。自分も他人も世界も全ても歪んでいるんじゃないかと。
 ボクは左手首を見る。横一閃に斬られた無数の傷跡。これまで何回も斬ってきたし、罰浩の死を知った夜にも斬った。
 ……斬ろうかな?
 今度こそは本気で。
 方法は簡単。ナイフで手首を斬って、放っておくだけ。だんだん意識も薄れていって、翌朝には屍体が一つ完成だ。雪の冷たさも死ぬのを助けてくれるだろう。

「死んじゃおっかナ……」

 ボクは呟く。

「死んじゃおっカナ死んじゃおっカナ死んじゃおっカナ死んじゃおっカナ死んじゃおっカナ死んじゃおっカナ死んじゃおっカナ」

 ここで終わらせてしまおうかな……。
 ……いや、まだ終わらせるわけにはいかない。折角面白くなってきたばかりなんだ。今までのボクじゃいけない。前に、前に進まなくては。
 わかっている。わかってはいるけど……

「ピロピロピーピーパーピロパー」

 ビクッた。
 携帯の着メロが鳴った。確か人飼に「着メロじゃないのは変だ」と言われて勝手に設定されたのだ。気付けばボクの上にはかなりの量の雪が積もっていた。
 ボクは電話に出る。

「……モシモシ」
「あ、捩斬クン!?」

 人飼だった。なんだか声が落ち着いていない。

「どうしタ?」
「あの……えーっと……」

 あの人飼が慌てている。一体何があったのだろうか?

「何だヨ?何があったんダ?」
「美那ちゃんが……

美那ちゃんが殺されちゃった……」

「………。…………」

 世界がまた、悲鳴をあげる

「捩斬クン、今どこ?」
「……公園」
「じゃあ今すぐMarch hairに来て! 私達もすぐ行くから!!」
「……わかっタ」

 ボクは電話を切った。

 見七 美那(みなな みな)同級生。クラスメイト。知り合い。友人。ロリータ趣味。眼鏡。小柄。白髪。運動神経ゼロ。歴史と家庭科が得意。お菓子を作らせればクラスで右に出る者はいない。図書委員。でも本嫌い。漫画好き。恋する乙女。ボク達にとって重要な存在。ボクの世界にとって重要な存在。

「……なんなんダヨ」

 気付いたばかりなのに。分かったばかりなのに。

「ふざけんジャねぇヨ!!」

 ボクの世界は、着実に崩壊が進んでいた。

作品名:Gothic Clover #05 作家名:きせる