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Gothic Clover #05

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『なぁネジ君』
『ナンダ?』
『なんか不幸だわーって思う時ってある?』
『ボクはこの世に生まれてきたコト自体、不幸だと思っているヨ』
『うわ根暗』
『ネクラというより現実を直視していると言って欲しいネ。実際、ボクなんかが生きていても周りに迷惑かけるだけだシ、世界にとってマイナス要素でしかない自分って本当に大嫌いなンダ』
『そういう思考方法を持つ奴は嫌いだな。変わる努力をするよりも諦める理由をコネるような奴。殺したくなってくる』
『ソレ本気?』
『冗談です☆』
『……そういう罪久だってどうなんだヨ。やっぱりあるノカ? 不幸だと思うコト』
『人間を殺している時に…そう思うかな?』
『殺人狂のお前がカ?』
『ああ、なんでこうなっちまったかなぁって思う。いつから人を殺すようになったのかな? って。人間を平気で殺して、それを何の感情もなく見つめている自分を考えて、自分が大嫌いになっている時が一番不幸だ』
『それじゃあオマエも生きてて辛いってことカ? なんだよ他人のコト言えないじゃねぇカ。そういう奴は嫌いじゃなかったノカ?』
『だから言っただろ? 自分が大嫌いだって。じゃあネジ君、質問を変えよう。ネジ君にとって「生きている=不幸」なのか?』
『んニャ、「生きている→不幸」ダナ。=と→の差は結構重要だゼ?』
『くっはっはっ、まるで太宰治だな。罪の反対は法か罰かってか?』
『アリャ明らかに法だと思うけどナ。法あってコソの罰だからナ。そんな当たり前の事も受け止められずにただうなだれてキレているダケの太宰がわかラン』
『じゃあネジ君は「生きている」ことに対してどう思っているんだ?』
『んなモン、決まってんダロ』
『なんだ?言ってみ』
『生きててつまらないコトこの上ありまセン』
『くはっはっははは、お前ほんと最高! 大好きだよもう、くははっ』
『好かれるような事でもないと思うガ』
『くはは……はぁ、つまらない、か』
『?』
『なぁネジ君。俺は今までいろんな奴を殺してきた』
『……アア』
『でもさぁ、そんな奴がいきなり「人殺しをやめたい」なんて言って、やめられると思うか?』
『…………』
『俺、正直言って「飽きちまった」んだよ。人を殺すことにさ。つまんないんだよ。面白くないんだよ。殺しても殺しても生きる理由がわからねぇ』
『罪久……』
『俺さ、別に今死んでも構わななななななななななななななななななななななななな─────』

++++++++++

 ……。
 起きた。
 見事に夢オチ。
 冬だというのに気持ちの悪い汗をかいている。学校に行く前にシャワーを浴びた方がいいかもしれない。
 クッソ
 気分悪い
 彼は死人だ、関係ない……とは今更言わない。ボクの世界を構成する上で、重要な存在だった罰浩の代役は罪久しか勤まらない。それが無くなってしまった空白。
 クソッ
 クソッ
 クソッ
 くたばれ!
 ……。
 次のステップ。
 起きたらベッドから出ましょう。冬の朝の最大の難関。

「……起きなキャ」

 ボクは布団を出ると素早く居間に向かい、ストーブの電源を点けるとすぐに風呂場に駆け込んだ。服を脱ぎ、シャワーの水を出して温かくなるのを待った後、頭からシャワーをかけた。
 やっと温まれた。やっぱり生物は温度がないと生きていけないもんだな。
 風呂場から出ると身体を拭いて服を着る。その頃にはストーブによって居間は暖まっているので快適状態。さっそく朝食を作る。が、しかし……
「……サボっちゃおうカナ」

 とてもじゃないが、学校に行けるような心境じゃなかった。ボクはフライパンをしまってベッドに入る。
 あ〜、ぬくぬく。やっぱりベッドっていいなぁ。
 そして、考える。
 罪久のこと。罰浩のこと。
 罪久は罰浩と同じように殺されていた。これ以上ないというぐらいにバラバラにされていた。
 凶器は、切り口から見て刃物。殺されたのは、死体には虫しかたかっていなかったことから、恐らく一昨日の深夜〜早朝の間ぐらい。他には何も情報は無し。うーん、警察の捜査力を借りてみようかな?
 ボクはテレビをつける。ちょうどニュースでは『山舵市の工場跡地にバラバラになった死体が──』とか言っていた。ボクはあの後にすぐ帰ったから、きっと別の人が見つけて通報したのだろう。テレビでは工場跡地で死体が見つかった、殺されたのは一昨日の深夜から早朝にかけてだ、と既に知っている情報ばかりであった。警察使えねぇ。
 ……ふむ、手掛かりが少な過ぎるな。これじゃあ犯人像さえも浮かんでこない。
 いや、待てよ。罪久が殺された理由はもしかして歌劇団と倶楽部の抗争なのかもしれない。別に罰浩と同じように通りすがりの殺人鬼に殺られたわけではあるまい。ん? でもなんで罰浩と罪久は同じ殺され方なんだ?
 …………。
 逆に考えよう。罪久の死因が両団体と関係ないのでなく、罰浩の死因が両団体と関係があったとすれば……罰浩は歌劇団と倶楽部の抗争に巻き込まれた!?
 何故?
 罰浩は歌劇団か倶楽部のどちらかの一員だった? いや、でも何も無い場所で転ぶようなあいつが、そんな規定外の殺人集団に加わってるはずないし……でももし一員だとしたら……罪久と同じ殺され方だから、罰浩も恵之岸歌劇団かなぁ?
 あ〜
 混乱してきた。
 ……。
 気晴らしに出かけるか。
 ボクは私服に着替えながら、どこに行くか考える。ご飯まだだし、March hairにでも行こうかな? でもまだ開店していないだろうから、あの廃工場にでも……いや、今は警察で一杯か。しょうがない、公園にでも行こう。
 ボクはストーブを消してガスの元栓を閉める。
 ふと、テーブルの上に目をやる。そこには一本の黒いナイフ。罪久のナイフだ。ボクはそれを静かに腰のホルダーに修めた。そしてドアを開けて家を出て鍵をかける。
 外では雪が降っていた。傘は差さずに上着のフードをかぶる。
 歩くたびにサクリ、サクリと音がする。だいぶ積もっているらしい。ボクは白い息を吐く。
 さて、行くか。

++++++++++

 雪が積もる公園。
 ボクは冷たいベンチに腰掛けて、暖かい缶コーヒーを飲む。公園には誰もいない。遠くから学校のチャイムが聞こえてきた。この辺の学校は……ああ、山舵小か。
 そういえば、小学生の頃だっけ?
 恵之岸と会ったのは。

 第一印象は『普通な奴』だった。容姿も行動も反応も全て普通。日本の同年代の人間全員を足して、それを日本の同年代の人間全員で割ったような奴だった。クラスで普通に話して、放課後に校庭でドロケイをしている時に、いつの間にか混ざっているような奴だった。
 特に仲が良かったわけではないし、悪かったわけでもない。
 ボクは彼に近付こうとはしなかったし、彼も同じだったが、ボクにとってはその関係が一番ベストだった。
 しかし、彼はある日、何の前触れもなく何の前置きもなく何の予告もなく何の伏線もなくいきなり突然唐突に、

 内臓をぶち撒けて死んだ

 当時のボクには原因もわからずにかなり困惑した。警察もメディアも頼りにならず、ボクは独りで原因解明を試みたが、小学生のボクには当然の如く解けること無く事件は過去となった。
作品名:Gothic Clover #05 作家名:きせる