Gothic Clover #05
なんでこんなに辛いんだ?
なんでこんなに苦しいんだ?
なんで、
なんで、自分に嘘を、ついているんだ?
「ぐうぅぅウウぅウうウうウぅウウゥうウゥうウウぅウウぅウうウ………」
ボクは唸る。
気持ちが悪い。
胸がムカムカする。
腹が苦しい。
頭が痛い。
くらくらする。
ぐらぐらする。
世界が回る。
世界が狂う。
「ううウうウウッ!!」
ボクは踏ん張って立ち上がる。
行かなきゃ。
行かなくては。
ボクは前を見る。
何処へ?
ボクは何処に行くっていうんだ?
「…………」
その時、ボクの携帯が鳴る。
聞き慣れた着メロ。
この曲は確か、人飼だ。ボクは震える手で携帯をポケットから取り出す。
「……モシモシ」
『…………』
相手は答えない。
答えない、けど、ボクは知っている。相手が誰だか知っている。
「人飼……じゃあナイよナ」
『…………』
「もうわかったヨ。君が誰だか、ボクはもうわかっていル」
『…………』
相手は答えない。
期待はしてない。
「夕暮を殺したノハまずかっタ。ボクにヒントを与えすぎたんだヨ。マ、暴走状態の君に人を殺すなって言う方が無理だろうけどネ」
『…………』
相手は答えない。
「君は人飼の携帯を使っているケド、もしかして人飼はもう殺したのカイ?」
『…………』
相手は答えない。
そして沈黙。
しばらく沈黙が続く。
ボクは待つ。
相手の返事のみを待つ。
そして数時間のような数秒がたった末、相手はただ一言だけ言った。
『屋上』
そして電話は切れた。
屋上か。おそらく学校の屋上だろう。随分と大胆な場所を選んでくれる。殺害現場と同じ建物じゃないか。
……行かないと。
ボクは学校に向かって走る。
くそっ。
下らない。
笑えない。
面白くない。
つまらない!
「つまらなくなって来やがっタ!」
あいつなら多分、「面白くなって来やがった」と言うだろうな。
少しだけ、そう思った。
作品名:Gothic Clover #05 作家名:きせる