Gothic Clover #05
「見七、死んじまったな」
「アア」
「なんで死んじまったのかなぁ」
「…………」
どうやら人間というものは、理由や原因のない行動に満足出来ないようになっているらしい。それはボクも同じ。
そういえば、夕暮に聞きたいことがあったのを思い出した。見七の机のあの落書き。落書きが示していたのは夕暮のロッカー。
「ねェ夕暮」
「……何?」
「見七が殺される前、見七と何かあっタ?」
「何かあったって?」
「見七から何か渡されたりとカ」
「…………ないな」
「本当?」
「……うん」
「わかっタ」
その時携帯が震える。誰からのメールだろう? そう思いながら携帯を開く。
001 11:24 (non title) 珠世灘澄
灘澄だ。ボクはメールを開く。
『捩斬から借りたナイフ、やっぱりいらない』
? どうしてだろう?
ボクは「いいから持ってろよ」と返信する。
「誰?」
「ン、灘澄ダヨ」
「何話してんの?」
「イヤ、特に大事な話じゃないヨ」
夕暮にはナイフの件は伏せておくことにした。
携帯が震える。お、返信が来たか。
メールには『わかった』とだけ書いてあった。
うーん、灘澄の「一人でケリをつけたい」という気持ちは解るが、やはりあの殺人組合と殺人集団が関わっているからには放っておくわけにはいかないしな。
「捩斬、私そろそろ帰るわ」
「ン、そうカ」
「このまま捩斬は掻太待ってるつもり?」
「もちろんそうだケド」
「……そっか、そうだよね」
うつむく夕暮。
「どうかしたのカ?」
ボクは心配して夕暮の顔を覗き込んだ。その途端に夕暮はボクからバッと離れる。
「いや、なんでもない」
「なんでもないって言える状態に見えないヨ」
「なんでもない」
「本当?」
「とにかくなんでもないのっ!」
「わかったヨ。耳を紅くしてまで言うなヨ」
耳というか、顔全体が真っ赤だ。こんな夕暮は初めて見る。
「……じゃあね、捩斬くん」
「ン、アア」
ボクはその言葉に対し、手を軽く振ることで応えた。……あれ? あいつ、ボクの事を君付けで呼んでたっけ? まぁいいか。
さて、また一人ジョジョしりとりでもするか。さっきムーディー・ブルースで終わったから次はスか。ス、スティッキー・フィンガーズ、ズ、ズ、ズッケェロ、えっとローリングストーンズ……
「おまたせぇえ!」
後頭部を殴られた。掻太が戻って来たのだ。
結構効いた。
「いちいち殴るナッ!」
ボクは蹴りかえすが全てよけられる。全てマトリックス避けで。
……すげぇ。
実際にこれできる奴初めて見た。
「さー帰ろうぜ」
「ったク遅いんダヨ」
「悪い悪い」
ボク達は学校を出る。
「そういえば捩斬、灘澄と現場行ったんだってな」
「……灘澄が言ったノカ?」
「ああ、まぁな」
意外だ。今の状態の灘澄は、余計なことはあまり言わないと思っていたが。情報収集の幅を広げるために掻太にも話したのだろうか?
「いつ言ってタ?」
「さっき、学校で」
「ふーン」
「…………」
「…………」
「…………」
「……掻太?」
「ん?」
「今回は『俺も現場に行きたかった』とか言わないんだナ」
「……………あ、ああ」
やはり掻太も見七が死んだことによって動揺しているらしい。当たり前か。
ボク達は交差点に着く。
「March hairでも寄ってく?」
「イヤ、やめとク」
「……そうか」
元々期待していなかったのか、掻太は軽く頷いた。
そうしてボク達はそれぞれの帰路についた。
しばらく街を一人でぶらぶらした後に家に帰ったら、ドアの前に石砕さんがいた。前とは違って今回は緑色セーターにベージュのスカート、茶色いブーツ。
「アレ、石砕サンじゃないですカ」と声をかけた瞬間、
石砕さんはボクに抱き着いてきた。
もちろんボクの脳は混乱する。
な、なんだ、これは求愛行動? なんて大胆なんだ石砕さんったら。第一こっちにも心の準備が必要なんですよ? あ、でもこうやってわざと相手を混乱させるのが目的なのか? というかそれ以前に胸がっ、石砕さんの決して小さいとは言い難い胸がっ!!
とかボクが混乱しているうちにゆっくりと口元のマスクを外す石砕さん。
「……石砕サン?」
「壊滅しました」
「エ?」
「恵之岸歌劇団が、壊滅しました」
作品名:Gothic Clover #05 作家名:きせる