Gothic Clover #04
「そのすり替えたカプセルの中の薬は……3時間後にカプセルが溶け……胃液に反応した途端……炸裂します」
「炸裂?」
「腹が破裂して内臓をぶちまけるのですよ……」
内臓を、ぶちまける。
そういえば人飼、あの薬を飲んでいた。確か2時頃のことだ。今が4時過ぎだから、タイムリミットまであと1時間…1時間!?
「そんナ……ボクのせいで人飼が死ぬって言うのかヨ!!」
爆薬遣い
爆『薬』遣い!!
「あなたが悪いのですよ……あなた一人だけが悪いんです……わざわざ私を追った……私と出会ったあなたが全て悪いのです……」
ボクは、自分で世界を壊したというのか。
「まぁ……この解毒薬を飲めば助かるんですがね……」
解毒薬!?
そのカプセルの解毒薬だって?!
「渡セ!」
ボクはナイフを抜くと、人杭に飛び掛かった。しかし人杭は慣れているのか、ボクのナイフをするりとかわす。
「どうやら人質をとったのは正解だったらしいですね……その必死の表情……タマりませんね……」
「コノ野郎ッッ!!」
「フフ……」
人杭はコートの裏から手榴弾を取り出すとボクに向かって投げ付けた。手榴弾……いや、小型のグレネードか。
「クソッ」
爆発
なんとか直撃は回避したものの、衝撃波がボクの体を吹っ飛ばす。
「グゥッ」
壁に叩き付けられた。
「では……お先に……」
「ま……テ……」
放送室から出る人杭。
くそっ。脚を打ったようだ。思うように動かない。
「でもこのまま逃げて本当に見つからなかったらつまらないですね……では問題を言いましょう……まぁ……会場への招待状ってところですかね……」
会場?
こいつは何を言っているんだ?
「ふふふ……どうせあなたを殺すんです。その前にいい表情を見たくてですね。だから半年前から作ってた自信作……設置しちゃったんです」
人杭は恍惚とした表情で呟くように言った。
冗談じゃねぇ。
「さて、ここからが……問題です。その肝心の……自信作ですが。自分の自信作を披露するのに適した場所はどこでしょう……か……?」
そう言い残して人杭は放送室を出た。
「……くたばレ」
ボクは机につかまってゆっくりと立ち上がる。ダメージはまだ残っているが、時間が経てば回復してくるだろう。
それより問題は時間制限だ。今が4時15分ぐらいだから、あと45分か。45分以内に人杭から解毒薬を奪って人飼に飲ませなきゃいけない。結構キツいな。
しかも人杭がどこに行ったのかもわからないし…
そういえばあいつ、「問題」だとかなんとか言っていたよな。「自信作を披露するのに適した場所」? 自信作とはあいつの場合、やはり爆弾だろう。披露するって、大勢の前で見せるってことだろうか。あいつがこの学校から出るとは思わないし…
その時、窓の外の体育館から歓声が聞こえてくる。そうか、今は後夜祭の最中だもんな。
……後夜祭?
今、体育館には後夜祭のために全校生徒が集まっている。
……
やばい……あいつ、体育館を爆破する気だ!
「あの野郎ッ!」
ボクはまた走る。
今度は時間制限がある分、かなり必死だ。
死なせてなるものかよ。
人飼は死なせねぇ
折角ここまで面白くなってきやがったんだ。
気付けば、大切な奴ができた。いつの間にか、守りたい奴も増えた。
このボクが。
世界をあきらめていたボクが!
やっと気付いた!!
「死なせてたまるカ……」
ボクはナイフを握る。
さて、ここでお決まりのセリフでも一つ吐いてやるか。
ボクがずっと昔から、物心ついた頃から吐き続けていた言葉だ。
全く、
下らない
笑えない
そして何よりつまらない
「つまらなくなってきやがっタ」
ボクは初めてこのセリフを、心の底から吐き出した。
作品名:Gothic Clover #04 作家名:きせる