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Gothic Clover #04

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「飲メ」
「わかった」

 阿吽の呼吸だった。
 そう言って人飼は薬を何も聞かずに飲んでくれた。
 「理由聞かないノ?」と聞いてみれば「どうせまた変なコトに巻き込まれたんでしょ?詳しい話は後々じっくり聞くわ」とのこと。後々じっくり聞かれるらしかった。
 こうして人飼に薬を無事に渡してから、ボクはすぐに帰った。
 怪我の治療があるし、これ以上、学校にいても仕方がないような気がしたから、というのもあるが、ぶっちゃけてしまえば単に疲れただけという理由だったりする。
 その後、家に帰って治療を受けながら罪久に経過を聞かせ、わーわーと五月蠅い罪久を無視しながら夕食も食べずに即座に就寝したのだった。

 朝起きたら隣りで罪久が寝ていた。
 つまり添い寝
 お腹が膨らんでいた。
 妊娠!?…ではなく、恐らくシャツの下に枕を入れたのだろう。
 身を張ったギャグだろうか?
 それとも狙っているのか?
 とりあえず放置する

++++++++++

 そしてその朝から数時間後
 ボクはまたMarch hairにいたりする。
 学園祭の振り替えで、今日は平日だが学校は休みだ。
 現在11時ちょっと過ぎ。
 朝食はまだ食べていないので、早めの昼食を取ろうと思う。

「はい和風パスタお待ちどー」
「……今回は登場しないと思ってたんだけどナァ」
「ん?」
「イヤ、こっちの話デス」

 ボクはテーブルの上の皿に向き合う。
 皿の上にはパスタとは言い難い物体がのっていた。

「……詩波サン」
「何かにゃ?」
「この明らかに食べるコトを前提としていない謎の未確認物体は何ですカ?」
「だから和風パスタって言ったじゃん」

 ……どうやら和風パスタらしい。いや、少なくとも詩波さんはそのつもりのようだ。
 ボクは一つの可能性に賭けてみる。

「もしかしテ、作ったの詩波さんデスカ?」
「あ、やっぱりわかっちゃった?」

 そうなのかよ!
 やっぱりそうなのかよ!!

「大丈夫だよ。見た目はちょっとアレだけど、味は結構イケると思うから」

 イケると思う……思うって、味見してないのか!

「イヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤ詩波サン、ちゃんとこのメニューの写真通りの料理持って来て下さいヨ!」
「でもこのメニューの下に『写真はイメージです』って書いてあるでしょ?」

 物事には限度ってものがある。

「大丈夫だって、騙されたと思って食べてみなよ」
「それで本当に騙したら承知しませんヨ?」

 試しに一口食べてみる。
 既にパスタの形状を失っているのでスプーンですくって口に運ぶ。
 ……
 …………
 ……………騙された。

「味はどう?」
「ウウ……なんと言うカ……納豆とブルーチーズを混ぜたようナ……」
「うーん、隠し味程度のハズなのになぁ……入れ過ぎちゃったかな?」

 ……入れたのか? 納豆とブルーチーズ入れたのか?!
 うーん……吐き気がしてきた。
 なんとか飲み込んで、水を飲む。

「アーやばいですよコレ」
「えー、折角作ったのになぁ……」

 見れば詩波さんの指には絆創膏が貼られている。多分、詩波さんなりに努力したのだろう。詩波さんなりに。

「あ、その赤いの、私の血だから」
「怖ッ!!」

 思わず後ずさる。

「つーかなんで今日はお兄さんが作ってくれないんデスカ!?」
「今日はお兄ちゃん病欠」

 あ、駄目だ。
 今日はこの店での食事はもう駄目だ。
 詩波さんじゃあ駄目だ。
 諦めよう。

「ぶっちゃけ私、料理苦手なんだよね」
「自分で言うナ!! モウいいデス……とりあえずコーヒー下サイ」
「よーし、詩波スペシャル入れちゃうぞぉ!」
「普通のコーヒーでお願いシマス!」

 詩波さんの御兄様、早めの回復を祈っております。

「ほいコーヒー」

 カップに入った茶色い液体が運ばれる。
 恐る恐る飲む。

「……ア、詩波さんにしては普通の味じゃないデスカ」
「へへー、見直した?」
「えエ、上出来デス!!」
「近くの自動販売機で売ってたのをカップの中に移しただけだけどね」

 ずっこけた
 イスに座ったままずっこけるという高等テクを使う。
 素人にはオススメできない。

「真面目にやって下サイ! まったくモウ」

 なんだか早速疲れてきた。

「そー言えばさーあの服どうだった?」
「どうだったッテ?」
「あの私様の才能溢れるかわいい御洋服」

 ……そうだ、この人にはその恨みもあるのだった。

「……今は家にありますケド?」
「今度でいいから着てきて」
「断ル」

 もちろん即答。

「うーん、しょうがないか。ネネちゃんがくれた写真で我慢しよう」

 人飼の野郎ッッ……!!
 そういえば人飼の奴、薬は効いたのだろうか?
 少し、いや、かなり不安になる。昨日からずっと連絡していない。
 そう思った矢先、ドアのベルが「カラン」と鳴る。

「やっと見つけた」

 人飼だった。
 生きてた。どうやら薬は効いたみたいだ。

「家に行っても『いない』って言われたから、町中捜し回っちゃった」
「お疲れ様デス」

 ……ん?
「いない」って『言われた』だって!?

「……捩斬クン」
「ナンデスカ?」
「あの男の子、誰?」

 ……良かった。気付いてはいないみたいだ。そもそも罪久は罰浩と「同じ」なのであって、「似てる」わけじゃないからな。それは一度会わないとわからないものだし。
 しかし罪久については、人飼にはどういうべきか……

「えーっト……息子」
「…………」
「…………」
「…………」
「……じゃナくて弟」
「……ふーん」

 なんか納得してないっぽい。当然か。

「それよリ掻太はどうしタ?」
「なんか連絡つかないの」
「ンー寝てんのカ?」
「わからない。家に行っても誰もいないし……」

 休日を利用して旅行にでも行ったのだろうか?
 あの後、人杭をどうしたのか聞きたかったのだが。
 まぁ、明日でいいか。
 ボクはイスから立ち上がる。

「ごちそうさまデシタ」
「あれ、パスタ残しちゃうの?」
「コレを喰えト!?」

 死んでも嫌だった。

「捩斬クン、行くの?」
「ウン、まぁネ」
「ちょっと待って」

 人飼は脱いだばかりの上着をまた着る。その間にボクはレジに並ぶ。

「じゃあパスタとコーヒーでしめて680円ね」

 …………。
 ……あのパスタ金取るのかよ!!
 ボクは財布から小銭を取り出す。

「ありがとうございましたー」

 満面の笑顔。詩波さん多分、悪いと思っていないな。
 ボクは人飼と一緒にMarch hairを出る。

「捩斬クン」
「何?」
「昨日、何があったのか説明して欲しいんだけど」

 ……やっぱり説明しないと駄目か。

「…………わかったヨ」

 ボクは人飼と並んで歩く。
 さて、どこから話せばよいのやら。とりあえず罪久のコトは伏せておいた方がいいだろう。

「昨日、学校に殺人狂が来たんだヨ」
「殺人狂?」
「あア、人を殺したいから殺ス、殺人者でもナく殺人鬼でもなク、殺人狂ダ」

 ボクは淡々と話す。

「一目でわかったヨ。そいつが多くの人間を殺してるってネ。だから、ボクはそいつに近付いタ」
作品名:Gothic Clover #04 作家名:きせる