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Gothic Clover #04

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 ボクは人飼の黒い目を見ながら言った。

「近付いてしまっタ」

 公園に着いた。公園には誰もいない。錆びたブランコが風に揺れて、軋んだ音を出していた。ボクはそのブランコに、人飼はその隣りに座る。

「そいつとボクは会うべきではなかっタ。なぜならそいつはボクを見た途端『殺したい』と思ってしまっタからダ。そいつはボクを殺すためニ、まず人質をとっタ。そしてボクを自分のフィールドへと誘いこんダ。ボクは危うく殺されかけタ」

 ボクはブランコをこぎ始めた。

「あわやヘタレのトラブルメーカーが殺られそうになった時、そこに正義のヒーロー掻太君が駆付けタ」

 ブランコを思いっきりこぐ。高く高く、上へ上へと。

「掻太君は見事な手際デそいつを圧倒。ついでに人質も取り戻しまシタ。こうして、トラブルメーカーが起こシたトラブルは、掻太君のおかげで大団円となったのデス」

 ボクはブランコから飛び降りた。

「これで満足カナ?」

 ボクは人飼に振り返る。

「まぁ、だいたいわかったかな」
「ソウ、じゃア……」
「でもね、捩斬クン」
「……何?」
「どうして私に言ってくれなかったの?」
「言えるワケないダロ。ボクのせいでキミが飲んでしまった薬は爆薬デ、解毒薬を飲まなかったら内臓撒き散らして死ぬだなんてサ」
「……捩斬クンのせいなの?」
「そうダヨ」
「自分のせいだってわかっているなら、せめて本人に事情と現状を言うべきじゃない?」
「…………」

 人飼はブランコをこぎ始めた。

「それとも私のこと、信じてないの? 私がこれくらいのことで動揺するとでも?」
「信じてルヨ」
「信じてないよ。捩斬クンは誰も信じてない」
「…………」
「信じてもいない人達を、どうして守ろうとするの?」
「そんなノ……」

 そんなのボクの勝手だ、と言いたい。
 ボクが勝手に動いているだけ、お前らはそれを無視していればいい、と。
 ボクの勝手な『世界作り』に他人を巻き込みたくない、と。

「そんなノ、ボクの勝手だ……」
「勝手過ぎるわ」
「……別にいいダロ」
「良くないよ」
「なんデ?」
「見ているだけの方の気持ちにもなってよ」
「巻き込まないよりマシだロ、それともキミこそボクを信じていナイのカ? ボクがそれぐらいで死ぬとデモ?」
「だって捩斬クン、別に自分が死んだって構わないとか思っているじゃない」
「別にそんナ……」
「第一、自分を信じてもいない人を、信頼できると思う?」
「…………」

 その通りだった。
 正論だ。正解だ。反論の余地もない。
 人飼はブランコから飛び降りた。

「少しは頼ってもいいんだよ?話ぐらいは聞いてあげるし、慰めるぐらいのこともやってあげる」

 全く、困ったものだ。
 これだから人飼は苦手なのだ。
 人の気持ちをわかった上で、人の気持ちも知らずにズバズバと物を言ってくれる。

「マ、気が向いたらネ」

 ボクは「じゃあそうするヨ」と言うわけにもいかないので、適当にあしらう。

「というか次回から絶対に何かあったらすぐに即刻即座に私に言いなさい」

 もはや命令だった。

「あーあ、その『殺人狂』とかいう人に会いたかったなぁ…」

 そっちが目的か!
 ボクのことなんかどうでもいいわけね。なんだかがっかり来る。
 ボクは時計を見る。12時10分。一日はまだまだ残っていた。うーん、このまま家に帰ってもやる事ないしなぁ…。

「ねぇ捩斬クン」
「ン?」

 そう考えていた矢先、人飼の方から声をかけてきた。

「今朝のニュースでやってたんだけど、西丑川(にしうしがわ)で、バラバラでトランク詰めにされた死体が見つかったんだって。行ってみない?」
「今かラ?」
「うん」
「本気デ?」
「だめ?」

 人飼の黒い目がボクを見る。やめろ、そんな目でボクを見るな。
 そんな目で見られたら……行くしかないだろ、もう。

「……イイヨ」
「本当!? じゃあ早速行きましょ!」

 歩き出す人飼。
 ああもう、知らねぇぞ?
 ボクは後からついて行く。
 多分、ボクは死なない限りずっとトラブルに巻き込まれてゆくのだろう。
 そんな確信がボクの中にあった。

++++++++++

 6時ぐらいに家に帰った。
 家の中は静まりかえっている。どうやら罪久は外出中のようだった。
 今日は酷い目にあった。現場に行ったら狭史さんがいて、捕まって苛められてぐりぐりやられて散々な目にあったのだ。

「疲れタ……」

 ボクはベットにダイブする。
 そういえば、今月の仕送りまだ貰ってないな。やばいってわけじゃないが、貰えるものは早めに貰っておきたい。
 ボクは台所に向かって夕飯を作り始める。左手が使えないので、野菜が切りにくい。
 料理をしながら、昨日と今日の出来事を考える。
 人飼の言葉、

『少しは頼ってもいいんだよ?』

 あんな事を言われたのは初めてのような気がする。

「頼る…カ」

 できるだろうか?人間を信頼、いや、信用すらしていないボクが。
 そもそもボクは、自分の世界さえも信じているのだろうか?
 あの時人杭が言った「問題」、

『あなたにとって…『世界』って一体何なんですか…』

 ボクは包丁を振るってニンジンを真っ二つに斬る。

「フン」

 それについての「解答」は一言、たった一言で事足りる。
 下らない
 笑えない
 つまらない
 ボクにとっての「世界」とは…

「テメェにゃ関係ねーヨ」










 黒白詰草 第肆話 了
作品名:Gothic Clover #04 作家名:きせる