Gothic Clover #03
「あーはいはいハイハイ。いるんだよなそういうヤツ。なるほどねー。ネジくんはわかっちゃう人か。で、わかっちゃったネジくんは、人殺しの俺に一目惚れしちゃってつい、俺をストーキングしちゃったワケか」
「で、なんでキミは人を殺してるんダ?」
とりあえずスルーする。
「んーまぁ、家庭の事情ってやつかな」
「家庭の事情? なんだソレ?」
「家同士が抗争しててさ。なんか俺様も物騒なワケよ」
「極道?」
「正確には違うけど、ま、同じようなもんか」
「ふーン」
そのへんの事情は彼の問題なので、ボクはこれ以上は深く関わらないコトにした。
「あ、もう一ツ質問があるんダガ」
「なんだ?」
「この公園の辺りデ、屍体が木の上で見つかったって事件、知らなイ?」
「知ってるけど、何するつもりだ?」
「いや、別に何モ。ただそういう事件に興味があっテ」
「犯人とか捜して逮捕とか?」
「それならボクは君を見た時点で通報しているよ」
やれやれ、とボクは息を吐く。
それに対して罪久はにしし、と笑った。
「ああ、なるほど。ただ単に『そういうのに興味がある』ってタイプの人か」
「そうそう、そんな感じ。関わるのは嫌だけど、こういう殺人事件には大いに興味があるね」
「いるいるそういう奴」
どうやら理解したようだ。罪久はやけに機嫌のいい笑い声を上げる。
「その犯人ねー。知ってるぜ」
「お? 誰ダ、教えてくレ」
「俺様」
「…………」
絶句。
「いやー、いきなり襲われてさー。自己防衛ってやつ」
「つーか、なんでいきなり襲われるんだヨ。何か恨みでも買ってるノカ?」
「いろいろとね」
まぁ、こいつの放つ殺気やら死臭やらから判断すれば、恨みなんて凄いのだろう。
「なんで木の上で殺した?」
「相手が木の上にいたから、ナイフ投げた。それだけだよ」
猿みたいな相手だな。
「でも、死体処理しようと思ったら人が来ちゃってさー。顔見られたくないし、ややこしいことになりそうだったから逃げた。それだけだよ」
「なるほどねー」
というわけで、事件解決。
今回は案外すんなりと終わってしまった。
でも前回みたいに後処理を考えなくていい分、楽で結構。
「アア、あとサァ……」
「ん、何だよ? ネジくん?」
「その『ネジくん』っていうのやめてくれナイ?」
「なんで?」
「なんか嫌ダ」
「別にいいじゃん」
嫌なんだよなぁ、全く。
呼び方まであいつと同じかよ。
「で、ネジくん」
「ナニ?」
「お前こそなんで人間を殺してるんだ?」
「……」
「人も殺さずに、俺様の匂いがわかったワケじゃあないだろ?」
「……否定はしないサ。ま、ボクが人を殺してるのは単にボクがトラブルメーカーなだけだって事カナ。すぐに厄介ごとに巻き込まれて、仕方なく人を殺したことがある」
「トラブルメーカーとかそういう一言で片付けられる事ではないと思うが」
「お前が言うナ」
「ま、それはネジくんの問題だしね。俺が首突っ込む事じゃないよな」
「全くもってその通りダ」
「お前が言うな」
その後もボク達は利益のない無駄な会話を小一時間ぐらい続けた。最も残酷な人の殺し方とか、何故神は生物に死を与えたのかとか、ザ・ワールドを持っているにもかかわらず、同じ能力の持ち主の承太郎に負けてしまったDIOの敗因は何か、ゴールド・エクスペリエンス・レクイエムの反則度、ハンターハンターはいつ連載を再開するのか、などなど。
そして夜中の3時半を回ったので、ボク達は別れた。お互いにただの暇潰しだったし、ボクもそろそろ眠くなってきた。
帰りに罪久は「じゃーなぁー」とか言いながらブンブン手を振り回していた。また会うとは限らないのに……全く、どこまでも彼に似てやがる。
ボクは帰り道につく。空を眺めて、ぼんやりとさっきの出来事を考える。
これが今回のトラブルだとしたら、今までのよりもずっとマシだな。しかも彼とはまた会う機会があるとは限らない。勿体無いが、それが最良なのだろう。
さよなら罪久。
もうお逢いする事は無いでしょう。
作品名:Gothic Clover #03 作家名:きせる