Gothic Clover #03
「……仕方ない、か。悪い灘澄、ちょっと先に掻太の相手してるわ」
「おう、行って来い」
「行ってらっしゃーい」
灘澄と見七は苦笑して、人飼は相変わらず眠そうな黒い目で、ボクを見送った。
++++++++++
で、
結局みんな泳いでいるワケだが、
「それにしてもナァ……」
ボク達は遠くにいる3人を見た。
「オラ沈め!」
「食らうかっ!」
「ぬぉっ」
4人は海の中の他の人の迷惑にならない場所でボールを投げあっている。一見、ビーチボールで遊んでいるかのようにだが、
「おりゃっ!!」
「ぶはっ」
灘澄の投げたボールが掻太にあたった。掻太は鼻血を出して海水に浮かぶ。
それもそのはず、ボールはビーチボールじゃなくてバスケットボールだった。かなり硬い。
「掻太殲滅。あとは3人か」
夕暮がボールをつかんで灘澄と人飼、そしてボクを見る。ちなみに見七はさすがにリタイア。鼻血は出したくないらしい。
しかし、なんて暴力的な遊びだろう。
元はと言えば、夕暮がボールの種類を間違えたのが原因なのだ。それを「とりあえずボールには変わらないからコレで遊ぼう」と提案し、賛同してしまったのがボク達なのだ。
ルールは簡単。
「とりあえずドッヂボールみないな感じで」
つまり「勝ちたいならボールで奪って他の連中を殺れ」という事だ。
ちなみに勝者にはこの後行われるバーベキューにて肉増量というなんとも魅惑的な賞品が贈られるらしい。よって、みんな本気だ。
「沈め!」
「ギャッ!!」
灘澄が殺られた。
どうしよう。残るはボクと人飼の2人だけだ。夕暮の性格的には多分、ボクを殺った後に人飼を優しく仕留めるといった感じだろう。女性には優しいからな、夕暮。
予想通り夕暮はボクを狙ってきた。
「海の藻屑になりなァ!」
ボクは紙一重で避けると海水に浮かぶボールを取った。
よし、これで生殺与奪はボクが握ったも当然だった。
だがしかし、何故かボクは沈んだ。潜るつもりはなかったのに、視界の背景は空から海中へと変わる。つまり、この行動はボクの意思に反する行動なのである。しかし、何故・・・
ボクは足下を見た。
「?!!!!」
足に人飼がしがみついていた。
怖っ! 人飼の長い髪が海中で乱れる。人飼怖っ!!
ボクはなんとか人飼を振り切って水面上に上がった。
「ぶぷハァッ!」
上がった先には、
「……」
「……」
夕暮がボールを構えて待っていた。
夕暮がニヤリと笑う。人飼は笑わない。
こいつら、徒党を組んでやがった。
とりあえず、夕暮がボールを超至近距離つーか零距離な間隔で手加減も無く容赦も無くましてや「コレ痛いだろうなー」みたいな後ろめたさもなくボクの顔面に投げ付けた時点で以下を省略とする。
作品名:Gothic Clover #03 作家名:きせる