小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

Gothic Clover #03

INDEX|3ページ/15ページ|

次のページ前のページ
 




 6:50am
 山舵駅改札前。
 ボクは大荷物を持って集合場所に来た。

「おーい、こっちこっち」

 掻太が手を振っている。

「お待たセ」

 とりあえず今この場にいるのは以下の通り。
 珠世灘澄(たませ なだすみ。ハッカー。こいつの前にファイヤーウォールは役にたたない。)
 見七美那(みなな みな。ロリーな服を好む人。)
 夕暮血染(ゆうぐれ ちそめ。なんか和風チックなギタリスト。常に佩刀。危険人物。)
 桐馘掻太
 そしてボク、首廻捩斬。

「おはよう捩斬。ちゃんと海パン持ってきた?」
「持ってきたヨ。でもこの持ち物にある釣り竿ってなんダ」
「いや、もしかしたら釣りもするかもしれないし」
「釣り竿なんて持ってないカラ、一応釣り糸だけでも持ってきたケド」
「釣り糸だけ持ってるって、変なヤツだな。普段は何に使ってるんだ? 亀甲縛り?」

 釣り糸で亀甲縛りは無いだろう。

「アレ? 人飼は?」
「ここよ」

 後ろから声。
 さすがに慣れてしまったのか、ボクは振り向かずに「おはヨウ」と言った。

「おはよう。捩斬くんも来るのね。理由はやっぱり、あの事件?」
「まぁ……ネ。だからできればボクは途中で別行動に入りたい」
「なになに? 何の話だ?」

 灘澄が割り込んできた。

「いや、なんでもないよ」
「?」

 いっそ正直に言ってもよかっただろうか。
 ……いや、やはりやめておこう。今回の旅行の目的が死体見学と犯人探しなどと言うわけにはいかない。
 ボク達はこういう趣味がある故に、クラスではそれを隠しているしね。
 下手したらまた巻き込むことになる。

「じゃあみんな、出発すっぞー」
「おう、電車いつのに乗ればいいんだ?」
「今来てるやつ」
「…………」

 おいちょっと待て。

「急ぐぞ!」
「ちょっと待ってカートが!」
「引きずってでも走れ!」

 勝手な事を口々に言いながら改札を入ってホームへの階段を上る。
 電車はちょうど発車のベルを鳴らす。
 みんなで同時駆け込み乗車。

「あっぶねー」

 夕暮が額を手で拭う。
 間一髪でなんとか乗り切り、電車はゆるやかに発車した。

 さて、つまらない事この上ない、最悪の最悪への出発だ。

++++++++++

 窓の外を緑が流れてゆく。
 山舵駅から電車に飛び込み乗車してから3時間、ボク達はずっと電車に乗っている。もう何回乗り換えをしたのかも忘れてしまった。まぁ、今回の旅行は高校生の財力的な問題で新幹線を使うわけにはいかなくて、こんな時間のかかる行き方になってしまったのだ。
 まぁ、時間がかかるのは別にいい。退屈も嫌いではない。

「で、捩斬くん」
「ン?」

 ボクの隣で人飼がしおりを捲る。

「いつに抜け出す? 見てみればスケジュールがキツキツだけど」
「ああ、事件の話ネ」

 そう応えながら、ボクもしおりを鞄から取り出した。
 掻太が徹夜してまで作った「旅のしおり」。
 そこには修学旅行よろしく、スケジュールが分単位で刻んであった。
 くそ、どうしてアイツはこういう無駄なことには全力を注ぐんだ。

「旅館についた後に海で遊泳っていうのがあるナ。この時でいいんじゃないカ?」
「駄目よ」
「なんデ」

 人飼は相変わらず黒い瞳から強い眼差しを発しながら言う。

「私だって泳ぎたいもの」
「…………」

 うわ、すげぇ意外。

「というか思ったんだけどさサ」
「なに?」
「人飼、仲いいノ? あいつらト」

 あいつら、とは見七と夕暮、それに灘澄のことだ。ボクはクラスじゃ頻繁に話すので仲が悪くはない。掻太はあの性格である。人問わずいろんな奴をコミュニケーションをとるので、もちろん仲がいい。

「仲良くなった」
「ふーン、意外だ。前まではあまり話さなかっただろうニ」
「まぁね。でも最近になってから、やっと距離感がわかってきた」
「…………」

 距離感。
 人と人の間には、適した距離感が必要だ。それはたとえ、家族であっても恋人であっても。
 近づき過ぎてもいけないし、遠すぎてもいけない。相手ごとに違う「心地よい距離感」というのが、人間関係の中には存在する。
 だから距離感が近いというのは決して良いことではないし、距離感が離れているというのは決して悪いことでは無い。ボクはそう考えている。
 ただ、その心地よい距離とはすぐには分かるものではない故に、

「捩斬くん、どうしたの? ボーッとして」
「……あア、イヤ、考え事してタ」

 ボクは未だに、人飼にどのくらい近づけばいいのか分からずにいる。

「それにね。血染ちゃんとは、中学の頃が同じ学校なの」
「え、そうなん?」

 これもまた意外。

「向こうは仲良くしてくれたんだけど、私の方は人と仲良くするってどうすればいいのか分からなくて……」
「なるほどネ」

 いかにも人飼らしい。

「だから、こうやって仲良くなれたのは本当に最近」
「でも良かったじゃないカ」
「まぁ、ね」

 ボク達はゆっくりと息を吐いた。

「ああ、そうダ。事件に関してハ、タイミングがあったら各々行くって感じでいいんじゃないカ?」
「そうね。機会を見て行きましょう」
「おーい」

 掻太に声をかけられる。

「乗り換えだぞー」

 どうやら次の駅で乗り換えだそうだ。
 ボクと人飼は荷物を持って立ち上がった。

++++++++++

 乗り換えた電車が発車する。
 ボクは荷物の網棚に載せ、空いてる車内の席にどっかりと座った。

「うおぉぉおおぉおおぉ!!」

 掻太が窓の外を見て莫迦みたいに叫んでいる。何かと思って見てみれば、

「海だぁぁああぁ!!」

 海らしい。

「すげぇええ!!」

 すごいらしい。

「青ーーーー!!」

 環境が破壊されてゆく中、この辺りの海はまだ青いらしい。いいことだ。
 他の連中も窓に張り付く。

「キレー!」
「かもめー!」
「魚介類ーーー!」

 莫迦4人。

「海と言えばー? ハイ灘澄!!」
「水着ー!」
「ハイ見七!!」
「え、えーっと海の家?」
「ハイ夕暮!!」
「海の幸」
「ハイ捩斬!!」
「ボクに振るナ」
「ハイ人飼!!」
「溺死死体」
「あんまりだ・・・。」(×4)

 何はともあれ電車は進む。

++++++++++

 駅から歩いて十分、コンビニの近く酒屋の隣り、海の目の前に、その旅館はあった。

「…………」

 朝顔荘

「アサガオ……ねェ」

 もともと夏季に来る観光客を狙って造られたらしい。たしかに海の目の前にあるのでスポットとしては良い。もしこれが「惨劇館」とかそういう名前だったら、この小説も少しはそれらしい世界になったのだろう。いや、意味わからん。
 そもそも旅館なのに「荘」ってなんなんだろう。

「オイ捩斬、ボサッとするな、置いてくぞ。」
「ああ、悪イ」

 灘澄に呼ばれてボクは旅館の中に入った。
 中は木造で涼やかな感じ。中庭があって池もある。掻太がチェックインを済ませてボク達は部屋に案内された。部屋は男女に分かれて3人一部屋で二部屋。部屋の中は畳と障子。しかも広い。

「おおーー、いい感じじゃない?」
「よくこんな部屋取れたナ掻太」
作品名:Gothic Clover #03 作家名:きせる