Gothic Clover #03
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近所のゲームセンターにて。
ボクこと、首廻 捩斬(くびまわり ねじきれ)は友人の桐馘 掻太(きりくび そうた)と共に無駄遣いをしていた。
このゲームセンターは田舎にあるだけあって、一昔前のゲームも幾つか見られる。で、ボク達がやっているゲームは・・・
「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ!!」
「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄!!」
ジョジョだった。
「うりゃロードローラーだ!」
「食らうカヨ!」
「ちっ、ガードしやがった!!」
「時よ止まレー!」
「がっ、しまった!」
「食らいナァ!オラオラオラオラオラオラオラ!!」
「ぐはぁ!」
「よっしゃァア!」
「ノオォォォォォォ!!!」
いつになくハイテンション。
ボク達はゲーム機を離れて休憩所に行く。
「ジャ、アイス奢りネ」
「はいよ」
ボクはチョコミント、掻太はレモンソーダのアイスを食べる。
腕の傷はもう抜糸は済み、普段通りに動かせるようになっていた。
「あ、そうだ捩斬」
「ン?」
「言い忘れてたんだけどさぁ、今日中に荷物作りしてね」
「ハ? 何故ニ?」
「明日からオマエ、俺達と一緒に『ドキッ?! 男女混合温泉旅行!!』に行く予定だから」
「……」
脳の機能が2、3秒程停止した。
「え? ちょっとマテ? 聞いてないぞオイ!」
「行き先は静岡。出発は明日、山舵駅に午前7時に─―」
「断ル」
「はぁ?」
「断ルって言ってんノ」
「なんでだよ、別にいいじゃねぇか!」
「面倒臭いコトは嫌いダ。ましてや『みんなと旅行』だなんて面倒なコトこの上ないイベントになんて参加したくナイ」
「んだよ、しゃーねーなぁ」
「ボクがそういうの嫌いなの知ってるダロ」
「人飼も行くのに」
「…………」
脳の機能が3、4秒程停止した。
「あいつガ?」
「うん」
「嘘ダロ?」
「んーん」
「マジかヨ…………」
てっきりボクは人飼もそういう集団行動は苦手な方だと思っていたが、どうやら間違いのようだ。
「いや、本当は一回断られてるんだけどさ。最近になって急に『行く』って言い出して」
「? なんじゃそリャ」
「原因はきっと、コレ」
すびし、と掻太は鞄の中から一冊の雑誌を取り出した。
パラパラとページを捲ると、そこには……
「なるほド」
静岡の方で殺人事件が起きたようだ。
しかも死体が見つかったのは、公園の木の上だという。
木の上……なかなか奇怪な場所だ。
これは確かに興味深い。
「ちょうど、その近くなんだよなー。行き先が」
「わかっタ。ボクも行こウ」
「グッド!」
掻太はご機嫌な様子で親指を突き出した。
「荷物まとめりゃいいんダロ?」
「おぅ、明日の7時に山舵駅に集合だぞ。ハイ、これしおり」
わざわざ「旅のしおり」まで作ったのか。
「そうと決まれば次ガンシュー行くぞー!」
「ハイハイ」
アイスの棒を捨て、立ち上がる。
「さて、ト」
夏空を見上げてボクは呟く。
「つまらない事になりそうダ」
見上げた空は、憎々しい程に青かった。
作品名:Gothic Clover #03 作家名:きせる