Gothic Clover #02
そう、確かボクはこの写真を見ている時にこう思ったのだ『影なく綺麗に屍体が写っていた』と。
『でも、それが何だって言うんだ?』
「物体に光が当たれば影ができル。それは自然なことダ。でも、屍体を撮った写真に影ができないというのは完全におかしい。不自然だ」
『だから?』
「この写真に影がないのハ、それが意図的に排除されたというコトなんだヨ」
『意図的に?』
「ウン。多分、いろんな方向からライトを照らしてネ。あと、パソコンで少し処理もしてるのかな。奏葉坂造は、被害者を殺した後に自前で持ってきたキャンプとかによく使う携帯コンロかなんかを使って屍体を料理して自分の残酷さを楽しミ、さらに複数の場所から照明を当てて影を消した後に屍体の写真を満足いく形で撮って残シ、そしてさらに、その写真を捜査に混ぜ込んでスリルを楽しんダ」
だがいかんせん……編集しすぎたかな。
あの写真の死体は美し過ぎた。
死体っていうのはもっとこう、汚くちゃいけない。
人間が美しいわけがない。
「ま、こうやって他人の体を弄ぶ最低の殺人鬼だったってわけサ」
『反吐が出るってか?』
でねぇよ。
『じゃあ次の質問ー』
「ン?」
『犯行場所の変更に規則性を持たせたのは?』
「アあ、それも遊びダヨ。警察内部の人間だシ、次にドコに張り込みされるのか予想する様を見るのもまた一興だったんじゃないカ?」
人を殺すことを楽しむ人間の思考なんてよくわからないけど。
「さーて、答え合わせの時間は終了ダ」
『さんくー。あ、そうだ。この事、狭史さんに伝えておく?』
ふむ、どうしよう。
「いや、黙秘しといてクレ」
面倒臭いのは嫌いだ。
『あ、そうだ。あと一つ言うことがある』
「なんだ?さっさと言エ」
『お前の乗ってるバイク、ウチの親父のだから』
「!?」
『傷つけたら殺されるぞ。』
掻太の親父さん……思い出しただけでも身の毛がよだつ。
つーかオマエは親父さんの大切なバイクで信号無視したのかよ。
『くれぐれも事故るなよ』
「オマエに言われたくネェ」
『それじゃ、健闘を祈る』
「オイ!!」
『ツーッ ツーッ』
切りやがったあの野郎。
ボクは慎重にバイクを操作する。
しかし、殺人鬼ねぇ。
人を殺したいと思う心。誰でも少なからず所有している感情。
殺人期
殺人気
殺人企
殺人飢
殺人喜……
ボクは、ずっとその気持ちを抑えて生きてきた。でもボクが殺さなくても回りはどんどん死んでいった。ボクの回りはみんな狂う。ボクの回りはみんな死ぬ。みんなボクのせいで死んでいった。これではボクも変わらない。結局ボクも殺人者。確か人飼にも言われたっけ?「破滅を呼ぶ黒い目」云々。もう立派な罪人だ。
罪人は、自分の罪を償わなければならない。
この世の理ってやつだ。
では、ボクは償うべきなのだろうか?
誰に対して?
死んだ彼等に?
死んだ彼女等に?
それとも、ボク自信に?
罪は償え。罰を架せ。
咎は血肉で洗い流せ。
殺人鬼の贖罪…………か。
下らない。
ボクは目の前の建物を睨んだ。酒刃警察署。そこに奏葉坂造がいる。多分、人飼も一緒だ。
「好きにはさせねェ」
ボクは呟いた。
破滅の黒眼が今向かう。
裁きの丘へと走り行く。
作品名:Gothic Clover #02 作家名:きせる