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Gothic Clover #02

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 人飼と出会ってまだ2ヵ月ぐらい。ボクは彼女のコトを何も知らない。だが一つだけ、確実な事項がある。彼女はボクと同じだ。常に人間の暗黒の部分を求め、それを愛してやまない。しかし、ボクと彼女は同じだが別だ。彼女は殺人者をただの純粋な興味本位で求めているのであって、ボクのように同族意識があって求めているのでは無い。おそらく彼女は殺人というものをただの行為としてしか見ないだろうし、ボクは殺人というものをただの欲求の発散法としてしか見ない。
 つまり、ボクは汚れた暗黒の闇色であって、彼女は透き通る程に純粋な黒色なのだ。だからこそ、ボクは人飼に興味をもった。人飼の隣は心地良い。人飼のとる距離はちょうど良い。人飼は……

「下らねェ」
「なんか言った?」
「いや、独り言ダヨ。そこの交差点を左に曲がっテ」
「ここね。OK」

 ボク達はバイクに乗って針津岳を目指していた。運転は掻太、ボクはナビだ。

「んじゃ曲がるから振り落とされるなよ」
「ちょっとマテ。信号が赤ダ……」

 突破。

「ん? なんか言ったか?」
「……なんでもナイ」

 コイツの場合、何を言っても無駄だろう。ボクは地図を見る。

「おい、捩斬。もしかしてあの山か?」

見てみれば、右前方に山がある。

「あー、多分そウ」
「よっしゃ」

 もうナビはいらない。後はあの山に向かって走るだけだ。掻太はバイクのスピードをさらに上げた。多分、既に法定速度完全無視超爆走的な状態だろう。いや、意味わかんねぇっつの。
 針津岳が近付いてきた。

「なんだあれ?」
「どうしタ掻太」
「なんか見たことある人が……」
「!?」

 あの後ろ姿は……狭史さんだ。

「狭史さーん!」
「あれ? お前ら……って、あまり大きな声出すんじゃねぇ!」
「こんな所で何やってるんデスカ?」
「何もクソも、張り込みだよ」
「張り込み!?」
「ああ、次の犯行現場の最有力候補がここなんだよ」

 なるけど、警察も同じ予想を立てたか。まぁ、当たり前か。ん、ちょっとマテ!?

「狭史さん、何時ぐらいからここに張り込んでいるんですカ?」
「え? 昨日の夜ぐらいからかなぁ? それがどうした?」
「その間に不審者などは見ましたカ?」
「俺は見てないし、別方面を張っている奴等もまだ見てないらしい」

 昨日の夜から……か。人飼が襲われたのが今日だから、まだ犯人は現場に来ていないコトになる。

「それよりお前ら、学校は?」
「あー、ブッチっす」
「今すぐ戻れ」

 ここには犯人はいない。じゃあ……

「狭史サン」
「なんだよ」
「坂造さんは今ドコにいるんデスカ?」
「ああ、あの人は気になる事があるからって言って一旦署に戻ってる。多分、現場関係の事かと思うけど……」
「!!」

 なんてコトだ。裏をかかれた。
 ボクは走った。

「!?  捩斬!」

 掻太に構わず、ボクは鍵を刺しっ放しのバイクにまたがった。

「どこに行く気だよ?!」
「酒刃警察署」
「なんでそんな所に……」
「決まってるダロ?」

 ボクは当たり前のコトのように言った。

「奏葉坂造が人飼を誘拐した犯人だからに決まってるダロ?」

「……え?」
「誘拐? 犯人? お前何を言って……」

 ボクは構わずエンジンをいれる。

「掻太、バイク借りるゼ」
「おい捩斬?!」

 ボクを乗せたバイクは、唸り声を上げて走行を開始した。


 さて、警察署はどっちだったかな?ボクは辺りを見回す。その時、携帯が鳴った。

「モシモシ」

 ボクは電話に出た。

『うおーい、事故ってないか? 大丈夫?』

 案の定、掻太だった。

「あー、今忙しいカラ。それジャ」
『まてまて切るな切るな』
「なんだヨ」
『キミに重大な報告がある』
「何?」
『とりあえず『バイク盗まれた』って言って狭史さんに被害届出しといたから』
「…………」
『まて、切るな! 冗談だよ!』
「……冗談を言うためだけにボクに電話をかけたのカイ?」
『いや、それだけじゃない。お前に聞きたいコトがあるんだ』
「犯人についテ?」
『そう。なんでおやっさんが犯人なんだ?』
「まぁ、スプーンかナ?」
『スプーン?』
「ウン、掻太さぁ、昨日確か『March here』ハンバーグセット食べたよネ?」
『おう、うまかった』
「感想はどうでもイイ。んで一昨日、坂造さんはキミと同じセットメニューを食べていた」
『ああ、確かイカ墨のセットだったっけ?それがどうした?』
「セットメニューってスープとライス付きだったでショ?」
『・・うん。』
「ライスは兎も角、スープを飲む場合、大抵スプーンが必要だ。だから当然、セットメニューにはフォークとスプーンが一緒に運ばれてくるはズダ。しかし・・」
『しかし?』
「昨日、掻太がハンバーグセットを食べた後には食器と共にスプーンがあった。でも、」
『おやっさんが食べた後にはスプーンがなかった?』
「その通リ。多分そのスプーンは人飼が拾ってきたフォーク同様に、偽装工作に使おうとしたのカナ。あるいはスリルを味わうために、わざと現場に残して後で会議に提出しようとしたリ・・」
『スリルを楽しむ?』
「ほら、よくいるでショ?『事故るか事故らないかのスリルが面白い』とか言ってバイクの座席でアクロバット走行して本当に事故るヤツ。奏葉坂造の場合、自分が犯行に使った道具を今度は自分で『証拠品』として捜査会議に提出して、自分の犯罪を自分で捜査できるんダ。これだけでも充分にスリルを味わえル。さらに、奏葉坂造は自分の口で自分が起こした事件の残酷さを語るコトで自分の残酷性を楽しめるシ、いざとなったら偽の証拠品を作り上げて、自分が犯人だと疑われるのを回避するコトもできル。ここまで大胆なコトをできるのは、条件的にあの人しかいなイ」
『おいおい、スプーン一つでよくここまで推理したな。つーかもうこれは推理の度を越してただの妄想になりかけているぜ。よく考えてみろよ。スプーンがなくなったってのは日常生活でもよくありがちだ。なのにそれだけの・・・』
「もちろん、それダケの情報でこんなコトを言っているんじゃナイ。ちゃんと別の理由もアル」
『なんだよ?』
「写真ダヨ。これで確信しタ。スプーンはただのキッカケに過ぎなイ」
『写真って、あの現場のヤツ?!』
「アア、説明するにあたって図解をしたいかラ、狭史さんにあの現場写真を持っているか聞いてみテ」
『おう、ちょっとまて』

 何やら携帯の遠くから話し声が聞こえる。

『……みます…………つ要なんで……』
『ふざ……なん……かかよ…………ったく』

 どうやら揉めている御様子。
 おっと、信号赤だ。
 ボクはブレーキを引いて止まった。

『おまたせー』
「借りれタ?」
『ばっちり』

 狭史さんありがとうございます。

「で、この写真を見て気付くコトってあル?」
『ない』

 きっぱりとモノを言いやがる。

「よく見ろヨ」
『わかんねぇってば。』
「不自然だと思わないカ?」
『何が?』
「フラッシュをたいて撮っているのに屍体に影がないのは変だと思わないのカ?」

 信号が青に変わった。ボクはまた走り出す。

『……あ、ホントだ』
「ダロ?」
作品名:Gothic Clover #02 作家名:きせる