小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

Silver. unwritten,white.

INDEX|3ページ/4ページ|

次のページ前のページ
 

 『煙草なんて吸わないほうがいい』。

 ライターを見せてくれながら、彼は言った。

「いいものじゃない。手放せなくなるし、匂いが始終とれない。体に悪い」
「じゃあどうして吸ってるの」
 抗議の意味を込めて訊ね返す。まるで彼と自分の、大人と子供の差を示されているようで嫌だった。
 勿論、彼がそんな人間でないことは知っている。先生なのに偉そうでもなくて、子供相手でも適当に合わせたりする人じゃない。けれどどうしたって私には、それは大きな壁に見えてしまうから。
 拗ねるばかりの子供を余所に、彼は笑った。

「弱いからだよ。縋りたくなる。何かに依存しないと、生きていけない」

 目を眇めて、部屋の隅に視線を逃がした。かけた眼鏡のレンズ越しに黄昏が透けて映り込んでいる。
 淋しい色だった。
「煙草吸ってても強い人だっているよ」
 とっさに口にする。そう言わないと駄目な気がして。
 したたかに生きているようで違う、泣きたくなるような色。
 私よりも深くて、私よりも脆い。時折見えてしまう、彼の。
「そうかもね。けど、俺はそうじゃない」
 その自嘲的な瞳が、いつまでも目蓋の裏に焼きついて消えない。



“何に弱いの。”
 最後まで聞くことは出来なかった。
作品名:Silver. unwritten,white. 作家名:篠宮あさと