Silver. unwritten,white.
そこに何があるのか、私は知っていた。
いつだったか、振り向くと『それ』を手に眺めていた時があった。格好いいねと言ったら昔の恋人の貰い物だと笑っていた。
「じゃあ、私がプレゼントしたら使ってくれる?」
その表情が知らない誰かのように感じられて、茶化す振りをして遮った。私の心を知らないまま、彼はいいよ、なんて言ってニヤリと口角をあげた。
「けど、結構高いよ」
いつもポケットに忍ばせている、銀色のオイルライター。
角に蔦模様とイニシャルの入ったシンプルなデザイン。
使っているところは見たことがなかった。当たり前だろう。彼は仕事中だし、私が彼を知っているのはこの短い時間の中でだけだから。
けれど、かすかにさせている煙草の香りから、それを吸っている姿は容易に想像できた。
作品名:Silver. unwritten,white. 作家名:篠宮あさと