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Silver. unwritten,white.

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 あれから、もう7年。

 中学生だった私も、今や既に喫煙が許される年齢になっていた。
 社会人になったあの人はバイトをやめ、それ以来会っていない。彼が居なくとも私は無事に高校大学と卒業し、いつの間にか、あの頃の彼の年齢を越えていた。
 何処にいるのかも、何をしているのかも知らない。もう永遠に巡り会うことはないのだろう。

 けれど、私のポケットには銀色のライター。
 あげることは出来ないと知りながら、買わずにはいられなかったもの。

 あの人と同じ匂い。
 顔も声も記憶も少しずつ薄れていく中で、この匂いに包まれている間は鮮明に思い出せた。

 火をつけると思い出す、ずっと大好きだった人。 そしてこれからも忘れられない人。
 何かに依存しないと生きて行けないのだと彼は言った。弱いから、必要のないものに助けを請うのだと。
 哀しそうな目で笑って、何度も得ようとする右手を静かに下ろし、溜め息を吐く。その息は決して白くはない。
 虚勢を張って、己に嘘をついて。
 視線の先に居る誰かと比べて、自分はどうしてこんなにも子供なのだろうと嗤う。
 私と同じだ。

 煙草に火を灯すとき、ふと浮かび上がる自分の弱いもの。
“煙草吸ってても強い人だっているよ”
“そうかもね。けど、俺はそうじゃない”
 小さく呟いた。

「弱いから縋りたくなる。何かに依存しないと、生きていけない」



 何かに。誰かに。
 今なら分かる。

 あの人も、誰かに憧れていたのだろう。


作品名:Silver. unwritten,white. 作家名:篠宮あさと